2026.09.06

価格改定・値上げのお願い 例文2つと角が立たない書き方

文章作成AI活用業務効率化

価格改定・値上げのお願い 例文2つと角が立たない書き方

「値上げをしないと、正直もう続きません。でも、あの取引先にどう切り出せばいいのか分からない」

この相談を、群馬県内の経営者の方から立て続けにいただいています。材料も、電気代も、人件費も上がっている。上がっていないのは自社の単価だけ。数字の上では答えが出ているのに、手が止まるのは決まって「文面」のところです。

気持ちはよく分かります。金額の話は、一枚の紙で関係が変わってしまう可能性があるからです。だからこそ、多くの方が下書きを書いては消し、送らないまま数ヶ月が過ぎていきます。

この記事では、その一枚をAIと一緒に30分で仕上げる手順書きます。単なる例文集ではありません。文章を書き始める前に決めておくこと、AIに渡すプロンプト(AIへの指示文)、そのまま使える例文、そしてAIに任せてはいけない場所まで、順番に並べます。

実は当社も、2026年8月に自社の料金を改定したばかりです。人にお勧めする前に自分でやりました。その時に踏んだところも含めて、正直に書きます。

値上げの案内文の下書きを前に手が止まっている経営者
値上げの案内文の下書きを前に手が止まっている経営者

値上げのお願い文で失注する原因は、文章のうまさではありません

先に結論を書きます。値上げの案内で関係がこじれるとき、原因は文章の丁寧さ不足ではなく、判断材料が足りていないことです。

受け取った側の立場になると分かります。取引先の担当者は、その紙を読んで自分で決められません。社内の上長に説明して、承認をもらう必要があるのです。そのとき、手元にあるのが「諸般の事情により」という一行だけだったらどうでしょうか。説明のしようがありません。

つまり、値上げのお願い文の本当の宛先は、目の前の担当者ではなく、その後ろにいる決裁者です。ここが分かると、書くべきものが変わります。求められているのは、心のこもった謝罪文ではなく、担当者が社内でそのまま使える資料なのです。

「高い」と言われたときの3分解を、書く前に使う

もうひとつ、当社が商談で使っている考え方をお伝えします。「高いですね」と言われたときは、必ず次の3つに分けて考えます。

  • 総額が高い 支払い能力の問題。金額ではなく、範囲を分けて解決する
  • 月々の負担が高い 資金繰りの問題。支払い方や時期で解決する
  • 価値が分からない 説明の失敗。これは提供側の責任

このうち3つ目、「価値が分からない」だけは、値引きで返してはいけません。 価値が伝わっていない状態で安くすると、「価値がないから安くなった」と確定してしまうからです。

値上げのお願い文も同じ構造をしています。文面を書く前に、相手がどの理由で渋りそうかを想像しておくと、書くべき内容が自然に決まります。総額を心配しそうな相手には段階的な移行を、価値が伝わっていない相手には、この1年で何が変わったのかを書く。同じ文面を全員に送るのが、いちばん危ない選択です。

書く前に決める3つ。理由・適用日・逃げ道

AIを開く前に、次の3つだけは自分で決めてください。ここが決まっていない状態でAIに書かせると、それらしい日本語が出てくるだけで、使えるものにはなりません。

値上げの理由と適用日をノートに書き出して整理している様子
値上げの理由と適用日をノートに書き出して整理している様子

① 理由は「自社の都合」ではなく「外の事実」で書く

いちばんやってはいけないのが、「弊社の経営努力も限界に達し」という書き方です。悪くはないのですが、相手の社内では通りません。 決裁者から見れば「その会社の事情でしょう」で終わってしまいます。

代わりに使うのは、誰でも確認できる外部の事実です。中小企業であれば、いま次のような材料が使えます。

  • 最低賃金の引き上げ 群馬県では2026年8月6日の答申で、時間額を1,063円から1,120円へ、57円引き上げることが適当とされました(発効日は異議申出の手続きを経て決まります/出典は記事末尾)
  • 原材料・エネルギー価格の推移 業界団体の公表資料や、日本銀行の企業物価指数など
  • 運送費・外注費の改定通知 自社が仕入先から受け取った改定通知そのもの

特に人件費は説得力があります。仮に最低賃金でフルタイム1人を雇うと、時間額1,120円×月160時間で179,200円。ここに社会保険の会社負担がおよそ15%乗るので、月20万円を超えます。 そして最低賃金は23年連続で上がっていて、下がった年は一度もありません。

「うちも同じものを負担しています」という事実は、相手の会社でも同じように起きています。だから通ります。

② 適用日は「2ヶ月以上先」にする

急な適用は、それだけで印象を損ないます。相手の会社にも、予算の組み替えや社内システムの単価変更といった作業が発生するからです。

目安は通知から2ヶ月以上年度単位で動く相手なら期の変わり目合わせます。「4月1日から」「10月1日から」のように区切りのいい日を選ぶと、相手も社内で説明しやすくなります。

③ 逃げ道を1本だけ用意しておく

これが抜けている値上げ文が本当に多いです。値上げを伝えるだけの紙を受け取ると、相手には「飲むか、切るか」の二択しか残りません。二択にすると、切られる確率が上がります。

そこで、金額を下げる以外の選択肢を1本だけ用意します。例えばこうです。

  • 移行期間を置く(半年間は現行価格、その後に新価格へ)
  • 数量や頻度で調整する(まとめて発注いただく分は据え置き)
  • 範囲を分ける(一部の作業をお客様側で行っていただく代わりに現行価格を維持)

3つ目を使うときは、お客様側にやっていただく作業を必ず書面に書いてください。 書かないまま「共同でやるので安く」とすると、実態はただの安売りになります。当社もこれを一度やって、割に合わない仕事になった経験があります。

値上げのお願い文をAIに書かせる4手順(プロンプトつき)

材料が揃ったら、ここからはAIの出番です。手順は4つ、時間にして30分ほどです。ChatGPTでもGeminiでも、お使いのもので構いません。

スマートフォンとパソコンでAIに文面を作らせているところ
スマートフォンとパソコンでAIに文面を作らせているところ

手順1:AIに「立場」と「制約」を渡す

いきなり「値上げの文を書いて」と頼むと、どこかで見たような一般的な文章が返ってきます。最初に、次の情報を渡してください。

あなたは中小企業の社長の代筆をする、ビジネス文書のプロです。
取引先へ送る価格改定のご案内を作ってください。

【前提】
・当社: 群馬県の◯◯業(従業員◯名)
・相手: 10年以上お取引のある製造業。窓口は購買担当の方
・改定内容: ◯◯の単価を◯◯円から◯◯円へ(約◯%)
・適用日: 2027年4月1日納品分から
・理由: 最低賃金の引き上げと、原材料の仕入価格上昇(当社の仕入先からも改定通知あり)
・当社が先にやったこと: ◯◯を見直して年間◯円のコストを削減済み
・用意した代替案: 2027年9月末までは現行価格を維持する移行期間

【条件】
・A4一枚、800字以内
・相手の担当者が、社内の上長にそのまま回覧できる文書にする
・謝罪を繰り返さない。事実と数字を中心にする
・「諸般の事情」「経営努力の限界」という表現は使わない

大事なのは「当社が先にやったこと」行です。自社でコストを削る努力をした上で、それでも足りないから改定する、という順番が入ると、文書の説得力がまったく変わります。

手順2:3パターン出させて、いいところを混ぜる

一発で完成させようとしないでください。次の一行を足すだけで、選べるようになります。

文体の違う案を3つ出してください。
案A: 事実と数字を中心にした、簡潔で事務的な文体
案B: 長いお付き合いへの感謝を前面に出した文体
案C: 今後の品質維持のための投資である、と前向きに位置づける文体

3つ並べて読むと、自分がどれを送りたいかが一瞬で分かります。 白紙から書くのと比べて、判断がずっと楽になります。たいていは「Aの構成で、Bの冒頭」のような混ぜ方に落ち着きます。

手順3:相手の目で読ませて、穴を探させる

ここが、AIを使ういちばんの利点です。自分では絶対に思いつかない反論を出してくれます。

あなたは、この文書を受け取った購買担当者です。
社内の上長に説明したときに、上長から出そうな質問を5つ挙げてください。
そのうえで、この文書のどこが説明不足かを指摘してください。

当社が自社の料金改定でこれをやったとき、他社と比べて高いのでは、と聞かれたらどう答えるのか」という指摘が返ってきました。言われてみれば当然の質問ですが、書いている側の頭からは抜け落ちていました。この一手間で、文書の完成度が一段上がります。

手順4:声に出して読み、AIっぽさを削る

最後は人間の仕事です。自分で声に出して読んでください。 AIが書いた文章は、読み上げると必ず違和感のある場所が出てきます。

  • 「させていただく」が3回以上出てくる
  • 「昨今の情勢を鑑み」のような、普段自分が使わない言い回しが入っている
  • 一文が長く、息継ぎの場所がない

これらを自分の言葉に置き換えます。全部を直す必要はありません。 ただ、いちばん最初の一文と、いちばん最後の一文だけは、必ず自分の言葉にしてください。相手はそこを読みます。

【例文】取引先向けとBtoC向け、価格改定のお知らせ2パターン

上の手順で作ると、だいたい次のような文書になります。◯の部分をご自身の数字に置き換えてお使いください。

封筒に入れた価格改定の案内を確認している場面
封筒に入れた価格改定の案内を確認している場面

例文A:取引先(BtoB)向け

                                        令和◯年◯月◯日
株式会社◯◯
購買部 ◯◯様
                                        株式会社◯◯
                                        代表取締役 ◯◯

              製品価格改定のお願い

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、このたび誠に恐縮ながら、下記の通り製品価格を
改定させていただきたく、お願い申し上げます。

■ 改定内容
  対象製品: ◯◯
  現行価格: ◯◯円 → 改定価格: ◯◯円(約◯%)
  適用時期: 令和◯年◯月◯日ご納品分より

■ 改定に至った背景
  1. 最低賃金の引き上げにより、当社の労務費が
     前年比で約◯%増加しております。
  2. 主要原材料である◯◯につきまして、
     仕入先より◯月に◯%の改定通知を受けております。お当社では、◯◯の見直しにより年間約◯円の
  コスト削減を実施し、価格の維持に努めてまいりましたが、
  自助努力のみでの吸収が困難な状況となりました。

■ 移行期間のご提案
  令和◯年◯月末日ご納品分までは現行価格を維持いたします。
  貴社のご予算計画に合わせたご相談も承ります。

今後も品質と納期を維持し、ご期待に応えてまいります。
何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

                                              敬具

ポイントは「■ 改定に至った背景」を箇条書きにしていることです。文章で長く書くより、この形のほうが相手の社内で回覧されやすくなります。

例文B:一般のお客様(BtoC)向け

いつも◯◯をご利用いただき、ありがとうございます。

このたび、令和◯年◯月◯日より、
◯◯の価格を◯◯円(税込)に改定させていただきます。

昨年より材料の仕入価格が上がり続けており、
これまでは当店で吸収してまいりましたが、
これ以上は品質のほうを落とさざるを得ない状況となりました。

味と量はこれまで通りのまま続けたい。
そのための改定とお考えいただけますと幸いです。お、回数券をお持ちのお客様は、
有効期限内は現在の価格でご利用いただけます。

これからも変わらぬご愛顧を賜りますよう、
心よりお願い申し上げます。

BtoCでは、難しい言葉を使わず、選択の理由を一行で言い切るのが効きます。「品質を落とすか、価格を上げるか」で後者を選んだ、という説明は、お客様にいちばん伝わります。

AIに任せてはいけない3か所と、「値引きして」への返し方

ここまでAIを勧めておいて恐縮ですが、絶対に人が確認しなければならない場所が3つあります。当社が自社の料金改定をしたときに、実際にヒヤリとした場所でもあります。

① 金額と率の計算

AIは計算を間違えます。「1,000円から1,200円へ(15%の値上げ)」のような文が、平然と出てきます。 正しくは20%です。

金額・率・適用日は、必ず電卓で検算してください。ここを間違えた文書を送ると、値上げの是非以前に、会社の信用に関わります。

② 既存契約との関係

年間契約や自動更新の取引がある場合、契約書のどこに単価が書いてあるかは、AIには分かりません。契約期間の途中で改定できるのか、更新月まで待つ必要があるのかは、自社の契約書を開いて確認してください。判断に迷う場合は、弁護士や顧問の先生にご相談ください。

③ 送る相手ごとの出し分け

一斉送信で済ませたくなりますが、主要な取引先には、紙を送る前に一本ご連絡を入れてください。「近日中に価格改定のご案内をお送りします」と先に伝えておくだけで、受け取り方がまったく変わります。書面が先に届くと、相手は「相談もなく決められた」と受け取ります。

送った後に「値引きしてほしい」と言われたら

必ず来ます。そのときは、その場で答えを出さないでください。まず、総額の話なのか、月々の負担の話なのかを聞き返します。

「ありがとうございます。総額として大きいということでしょうか、それとも毎月のご負担として、ということでしょうか。どちらかで、ご提案の仕方が変わります」

この一言で、値引き交渉が条件のすり合わせ変わります。総額の話なら範囲を分ける、月々の話なら支払い時期や頻度で調整する。金額そのものは、いちばん最後まで動かさないでください。 一度下げた価格は、次の商談でも下がります。同じ商圏なら、下げたことは必ず伝わります。

お、賃上げに合わせて設備投資をする場合は、業務改善助成金のように、費用の一部が戻る制度もあります。値引きの代わりに使える手として、頭の片隅に置いておくと交渉が楽になります。群馬県内で使える制度は、群馬の最低賃金1,120円と助成金の記事まとめています。

まとめ。値上げのお願い文は、30分で作れます

長くなったので、まとめます。

  • 値上げのお願い文の本当の宛先は、目の前の担当者ではなくその後ろの決裁者回覧できる資料として書く
  • 書く前に理由(外の事実で書く)・適用日(2ヶ月以上先)・逃げ道(金額以外の選択肢を1本)3つを決める
  • AIには立場と制約を渡し、3パターン出させ、相手の目で穴を探させ、最後に声に出して読む4手順
  • 金額の計算・既存契約・送る相手ごとの出し分け3つだけは、必ず人が確認する
  • 値引きを求められたら、総額の話か月々の話かを聞き返す金額は最後まで動かさない

当社も2026年8月に自社の料金を改定しました。全国の相場を一度きちんと調べてみたところ、自社の価格が市場の下のほうに張り付いていたことが分かったからです。恥ずかしい話ですが、料金表の中に、訪問回数を増やしても金額が変わらない行が残っていたことにも、そのとき初めて気づきました。

値上げは、後ろ向きの作業ではありません。 自分の仕事にいくらの値段が付いているのかを、一度きちんと見る作業です。そして多くの場合、思っていたより自社は安かった、という結論になります。

その一枚が書けずに止まっているなら、AIを下書き係として使ってみてください。白紙に向かう時間がなくなるだけで、話はずいぶん前に進みます。

出典(2026年9月6日時点)

  • 群馬労働局「群馬県最低賃金の改正決定の答申を受けました」(令和8年8月6日答申・時間額1,120円へ57円引上げ/発効日は異議申出の手続きを経て決定)

https://jsite.mhlw.go.jp/gunma-roudoukyoku/newpage_01009.html

  • 群馬労働局「最低賃金・家内労働関係」

https://jsite.mhlw.go.jp/gunma-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/saitei_tingin.html

※制度の金額や発効日は改定されます。実際に文書へ記載される際は、必ず上記の一次情報でご確認ください。
※本記事の画像はAIで生成したイメージです。


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