群馬県の最低賃金が上がります。時間額1,120円。いまが1,063円ですから、57円・5.4%の引上げです。群馬地方最低賃金審議会が2026年8月6日に答申し、群馬労働局が8月7日に公表しました(答申の公表ページ)。発効日は答申文で「法定どおり」とされていて、公示を待つ段階です(昨年度は10月4日発効でした)。
パート・アルバイトを雇っている会社にとっては、9月中に賃金表を作り直す話です。ただ、同じ賃上げでも「10月にやる」か「9月にやる」かで、国から戻ってくるお金が変わります。
順番が逆に聞こえるかもしれませんが、こういうことです。
「どうせ上げる」なら、それは設備投資の原資になる
業務改善助成金という制度があります。厚生労働省の制度で、仕組みはこうです。
①社内で一番低い時給を引き上げる + ②生産性を上げる設備投資をする
この2つをセットで申請すると、設備投資の費用が助成される
つまり、10月に否応なく上げる賃金を9月のうちに前倒しして上げると、その賃上げが助成金の要件を満たし、設備投資の3/4が戻ってくるわけです。
賃上げは避けられません。避けられないものを、設備投資の入り口として使えるかどうかの違いです。
自分の会社が対象か、質問ひとつで分かります
「時給1,120円未満で働いている方は、いますか?」
いれば、その会社は対象事業者の定義そのものです。10月の改定でどのみち賃上げが必要になる会社が、そのまま制度の対象になります。
細かい条件も3つだけ確認してください。
- 対象になる人は 週20時間以上・雇用保険に入っている・雇い入れから6か月経過
- 申請は事業所ごと(工場と事務所は別々に申請できます)
- 同じ事業所は年度内に1回。過去に使ったことがある会社も、また使えます
いくら戻るのか
助成率は、群馬の場合は実質3/4と考えてください。
制度上は「事業場内最低賃金1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4」です。ただ群馬の現行最低賃金は1,063円なので、法令どおり支払っている会社の社内最低賃金は必ず1,050円以上になります。群馬で4/5は出ません。(ここは4/5で試算している解説をよく見かけるので、注意してください)
上限額は「時給をいくら上げるか × 何人上げるか」で決まります。
| 引上げ額 | 1人 | 2〜3人 | 4〜5人 | 8人以上 |
|---|
| 50円 | 30〜40万円 | 40〜70万円 | 70万円 | 110万円 |
| 70円 | 40〜50万円 | 50〜100万円 | 130万円 | 230万円 |
| 90円 | 90〜100万円 | 150〜240万円 | 270万円 | 450万円 |
幅がある欄は、従業員30人未満の会社のほうが高い設定です。小さい会社ほど手厚くなっています。
実際にもらえる額は、「設備投資額 × 助成率」と「コースの上限額」の、安いほうです。
例:60万円のシステムを導入 → 60万 × 3/4 = 45万円
(50円コース・1人・30人未満なら上限40万円なので、この場合は40万円が支給額)
会社の実質負担は20万円
何に使えるのか。ここが誤解されています
対象になる経費は、厚生労働省の業務改善助成金のページにあるリーフレットに例が挙がっています。
- 機器・設備の導入(POSレジで在庫管理を短縮、リフト付き特殊車両で送迎時間を短縮)
- 顧客管理情報のシステム化
- 経営コンサルティング(国家資格者によるもの)
業務を自動化するツールやシステムの構築費は、「顧客管理情報のシステム化」の区分で対象になります。 受発注の転記、勤怠の集計、見積書の作成——このあたりを仕組み化する費用です。
一方、コンサルティング費用は「国家資格者による」ものに限られます。 中小企業診断士などの資格を持たない事業者の指導料は対象外と読むのが安全です。ここを混同すると、申請の段階で経費が落ちます。
つまずくのは、制度の中身より段取りです
実務で事故りやすいのは、金額の計算ではなく手順のほうでした。
① 交付決定の前に発注したものは対象外です
「先に作ってもらって、あとから申請する」は完全に効きません。申請 → 交付決定 → 発注、の順番でなければ1円も出ません。急いでいる案件ほどここで外します。
② お金が入るのは最後です
交付決定 → 導入 → 支払い → 実績報告 → 審査 → 入金、という流れです。いったん全額を立て替えます。 資金繰りの計画に入れておいてください。
③ 見積書・納品書・請求書は、品名も金額も完全に一致させます
途中で「ついでにこれも」と仕様が動くと、書類が合わなくなります。助成金を使う案件では、見積を確定させたらスコープを変えないと決めておくのが安全です。
④ 予算が尽きたら早期終了します
公式に「予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります」と書かれています。群馬の申請期間は9月1日から発効日の前日まで(発効日は10月上旬の見込み)。1か月しかない上に、早く締め切られる可能性があります。
結論としては、9月の第1週に出すのが実務上の正解です。
申請そのものは社労士の先生の仕事です
念のため書いておきます。厚生労働省の助成金の申請代行は、社会保険労務士の独占業務です。 システム会社やコンサル会社が申請書類を作って提出することはできません(無資格の代行は罰則の対象で、受け取る側も不正受給に問われかねません)。
会社が自分で申請することは適法です。顧問の社労士がいるなら、まずその先生に相談してください。
逆算のカレンダー
| 時期 | やること |
|---|
| 8月中(いま) | 対象者が何人いるか確認・設備投資の中身を決める・見積を取る・社労士へ相談 |
| 9月1日〜 | 交付申請。同時に賃上げも実施(発効日の前日までに完了・就業規則にも反映) |
| 交付決定後 | 発注・導入 |
| 1月31日まで | 事業完了(支払いまで) |
| その後 | 実績報告 → 審査 → 入金 |
賃上げは交付決定を待ちません。 申請と並行して9月中に実施します。ここも間違えやすいところです。
制度の詳細と最新の期日は、業務改善助成金コールセンター(0120-366-440)か、群馬労働局の雇用環境・均等室にご確認ください。発効日は公示され次第、確定します。
出典(2026年8月26日時点)
この記事の数字は、次の一次情報から確認したものです。制度の期日や金額は改定されるので、実際に申請される前にリンク先をご自身でご確認ください。
発効日は、群馬労働局の公示をもって確定します。 本記事の「10月上旬」は昨年度(2024年10月4日発効)からの見込みです。
「うちは何に使えるのか」が分からないとき
制度の話より、自社のどの業務を仕組み化すれば効果が出るかのほうが難しいと思います。そこが決まらないと、設備投資の中身も見積も作れません。
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なお、申請の実務は提携する社労士の先生が担当します。設備の見積も、他社と比べていただいて構いません(この制度は10万円以上の経費で相見積が原則です)。制度を教えた人がそのまま売り手になる形を避けたいので、先に申し上げておきます。
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