2026.10.17

支払条件変更のお願い 例文|手形・60日超を振込にする書き方

例文取適法中小企業

支払条件変更のお願い 例文|手形・60日超を振込にする書き方

取引先から、いまも約束手形で代金を受け取っている。あるいは「月末締め、翌々月末払い」のように、納品してから入金まで2か月以上かかっている。資金繰りのことを考えると変えてほしい。でも、長く付き合ってきた相手に「支払い方を変えてください」とは言いにくいですよね。

実は、この話は2026年に入ってから、「言いにくいお願い」ではなく「ルールの確認」に近いものになりました。

  • 2026年1月1日に、下請法が改正されて取適法(とりてきほう)になりました。対象になる取引では、手形での支払いが禁止され、支払期日は受領日から60日以内と定められています
  • 振込手数料を受注側に負担させて、代金から差し引くことも、合意があっても違反になりました
  • 多くの金融機関が、手形・小切手の最終の振出期限を2026年9月30日に設定しています。電子交換所での手形の交換は、2027年3月31日に廃止されます
  • 取適法の対象にならない取引でも、2027年4月1日から、独占禁止法の告示で「受領から60日以内の支払い」が求められます

この記事では、自社の取引が取適法の対象かどうかの見分け方、目的別にそのまま使える支払条件変更のお願いの例文3つ、返事が来ないときの2通目、そしてAIで自社向けに書き直すときの注意点をまとめます。条件や日付は、2026年10月17日に公正取引委員会の資料を開いて確認したものです。

事務所のノートパソコンで、取引先への文書を作る経理担当者(画像はAI生成のイメージです)
事務所のノートパソコンで、取引先への文書を作る経理担当者(画像はAI生成のイメージです)
この記事の目次(8項目)

支払条件変更のお願いを出す前に、取適法の対象かを確かめる

例文を選ぶ前に、1つだけ確かめておくことがあります。その取引が取適法の対象かどうかです。対象かどうかで、手紙の書き方が変わります。

  • 対象の取引: 相手(発注する側)には、すでに手形払いの禁止や60日以内の支払期日を守る義務があります。お願いというより「確認させてください」と書けます
  • 対象外の取引: 今の時点では法律上の義務ではありません。ただし国は、対象外の取引も含めて支払いの適正化を業界団体に要請しており、2027年4月からは独占禁止法の告示で60日以内が求められます。「時代の流れに合わせてご検討を」と書くのが自然です

取引の内容と、資本金か従業員数で決まる

取適法の対象は、「取引の内容」と「資本金または従業員数」の組み合わせで決まります。公正取引委員会のリーフレットの表を、読みやすく直すと次のとおりです。

製造委託・修理委託・特定運送委託、プログラム作成・運送・倉庫保管・情報処理の委託の場合

発注する側(委託事業者)受注する側(中小受託事業者)
資本金3億円超資本金3億円以下
資本金1千万円超3億円以下資本金1千万円以下
従業員300人超従業員300人以下

上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託の場合(デザイン、コンテンツ制作、ビルメンテナンスなど)

発注する側(委託事業者)受注する側(中小受託事業者)
資本金5千万円超資本金5千万円以下
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下
従業員100人超従業員100人以下

資本金の基準か従業員数の基準の、どちらかに当てはまれば対象です。2026年1月の改正で従業員数の基準が加わったので、「相手の資本金が小さいから関係ない」と思っていた取引が、対象に入っていることがあります。

もう1つ大事なのは、2026年1月1日以降に発注された取引から新しいルールが適用される点です。それより前の発注分の支払いは、改正前のルールで扱われます。

相手の規模が分からないとき

資本金は、相手のホームページの会社概要や登記で確かめられます。従業員数が分からなければ、無理に断定しなくて構いません。手紙では「取適法の施行に合わせて」と書かずに、「手形・小切手の利用廃止の流れを受けて」と書けば、対象でも対象外でも角が立ちません。

2026年に変わった支払いのルール

ここで、手紙の中で根拠として使えるルールを整理しておきます。どれも公正取引委員会と中小企業庁の資料に書かれていることです。

ルール中身開始
手形払いの禁止手形による代金の支払いは違反(「支払遅延」に当たる)2026年1月1日以降の発注
電子記録債権・ファクタリング支払期日までに代金満額の現金を得ることが難しいものは違反同上
支払期日受領した日から数えて60日以内の、できる限り短い期間で定める改正前からの義務
振込手数料合意の有無にかかわらず、受注側に負担させて代金から引くのは違反(「減額」に当たる)2026年1月1日以降の発注
協議の求め受注側からの価格協議の求めに応じず、一方的に代金を決めるのは違反2026年1月1日以降の発注
遅延利息支払遅延や減額をした場合、年率14.6%の遅延利息を払う改正前からの義務

「月末締め翌月末払い」は大丈夫か

よくある疑問です。公正取引委員会のよくある質問(Q67)では、「毎月末日納品締切、翌月○日支払」のような月単位の締切は、具体的な日が特定できるので認められる、とされています。

一方で、60日の起算点は締め日ではなく、品物やサービスを受け取った日です。たとえば「月末締め、翌々月末払い」では、月の初めに納品した分は、入金まで90日前後かかります(当社で計算)。ここが、お願いを出すかどうかの分かれ目になります。

振込手数料は、改正前と扱いが逆になった

以前は、受注側が負担することを書面で合意していれば、実費の範囲で振込手数料を差し引くことが認められていました。取適法では、よくある質問(Q99)で「中小受託事業者の了解を得ていても」差し引いて払うことは問題になる、とされています。

長く続いている取引ほど、昔の合意のまま手数料が引かれていることがあります。入金明細を1か月分見て、請求額と入金額が手数料の分だけずれていないかを確かめてみてください。

受け取った書類を確かめながら、入金明細と見比べる2人の事務担当者(画像はAI生成のイメージです)
受け取った書類を確かめながら、入金明細と見比べる2人の事務担当者(画像はAI生成のイメージです)

支払条件変更のお願い 例文3つ

ここからが例文です。〇〇の部分を自社に合わせて書き換えてください。どの例文も、送る前に自社の取引が取適法の対象かを確かめ、対象かどうか分からない場合は法律名を出さない言い方を選んでください。

公正取引委員会のよくある質問(Q137)では、受注側が協議を求めるときは、書面や電子メールなど形に残る方法で行い、記録を作って保存しておくことが望ましいとされています。電話や口頭だけで済ませず、メールか書面で出しましょう。

例文1:手形・小切手から振込への変更をお願いする

件名:お支払い方法の変更についてのお願い

株式会社〇〇

購買部 〇〇様

いつも大変お世話になっております。

株式会社〇〇の〇〇でございます。

現在、弊社への代金のお支払いを約束手形にてお願いしておりますが、

手形・小切手の利用廃止に向けた動きを受け、

今後のお支払いを銀行振込に切り替えていただけないか、ご相談させていただきたくご連絡いたしました。

なお、2026年1月1日以降のご発注分につきましては、取適法により手形でのお支払いができなくなったと承知しております。

弊社の認識に誤りがございましたら、お手数ですがご教示いただけますと幸いです。

振込先は、現在のご請求書に記載の口座でお願いできればと存じます。

切り替えの時期や手続きについて、ご都合のよい日にお打ち合わせの機会をいただけますでしょうか。

お忙しいところ恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

書き方のポイント

  • 2段落目の「取適法により」の1文は、対象の取引だと確かめられたときだけ入れます。分からなければ削ってください。削っても依頼文として成り立ちます
  • 「弊社の認識に誤りがございましたら」と添えると、相手を責める文面になりません。法律を盾にするのではなく、確認のお願いとして出すのがこつです
  • 振込先は新しく書かず、今の請求書の口座を指定します。メールに口座番号を書くと、なりすましの請求と区別がつきにくくなるためです

例文2:支払サイトの短縮(60日以内)をお願いする

件名:お支払い条件についてのご相談

株式会社〇〇

経理部 〇〇様

いつも格別のお引き立てを賜り、ありがとうございます。

株式会社〇〇の〇〇でございます。

現在、弊社へのお支払いは「月末締め、翌々月末払い」とさせていただいております。

この条件ですと、月の初めに納品した分は、ご入金まで90日前後かかっております。

原材料や外注費の支払いが先に立つことから、

お支払いを「月末締め、翌月末払い」に改めていただけないか、ご相談させていただけますでしょうか。

公正取引委員会と中小企業庁からも、受領から60日以内へのお支払いの短縮が呼びかけられていると承知しております。

一度に変更が難しい場合は、段階的な見直しでも大変ありがたく存じます。

ご多用のところ恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

書き方のポイント

  • 「90日前後」のように、今の条件で実際に何日かかっているかを数字で書きます。自社の直近の納品日と入金日を2、3件見れば、すぐに数えられます
  • 理由は「資金繰りが苦しい」より、「仕入れや外注の支払いが先に立つ」のほうが、相手の経理担当者が社内で説明しやすくなります
  • 「段階的な見直しでも」と逃げ道を書いておくと、ゼロ回答になりにくくなります

例文3:振込手数料の差し引きをやめてもらう

件名:お振込手数料のお取り扱いについて

株式会社〇〇

経理部 〇〇様

いつもお世話になっております。

株式会社〇〇の〇〇でございます。

先日のお振込みを確認しましたところ、ご請求額から振込手数料〇〇円を差し引いてお支払いいただいておりました。

以前、弊社が手数料を負担するとのお取り決めをしておりましたが、

取適法の施行により、2026年1月1日以降のご発注分は、合意の有無にかかわらず振込手数料を差し引くことができなくなったと承知しております。

つきましては、今後のお支払いはご請求額のとおりでお願いできますでしょうか。

弊社の認識に誤りがございましたら、ご教示いただけますと幸いです。

細かいお願いで恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。

書き方のポイント

  • この例文は、取適法の対象の取引に限って使います。対象外の取引では、法律上は差し引き自体が禁止されていないので、「今後はご負担いただけないか」というお願いの形に書き直してください
  • 過去の差し引き分を返してほしい、と一緒に書くかどうかは、相手との関係と金額で決めてください。まずは「今後の分」から始めるほうが話が進みやすいです

返事が来ないときの2通目

1通目を出して2週間ほど返事がなければ、もう一度送ります。取適法の対象の取引では、公正取引委員会のリーフレットに、協議の求めを無視したり、繰り返し先延ばしにしたりして協議を困難にさせることも違反になると書かれています(代金に関する協議の場合)。ただ、2通目でそれを書く必要はありません。日付を入れて、淡々と再送するのが一番です。

件名:【再送】お支払い方法の変更についてのお願い(〇月〇日送付分)

〇〇様

お世話になっております。株式会社〇〇の〇〇でございます。

〇月〇日にお送りしましたお支払い方法のご相談につきまして、改めてご連絡いたしました。

行き違いでしたら申し訳ございません。

年末に向けて社内の準備がございますので、

〇月〇日までに、お打ち合わせの候補日をいくつかいただけますと助かります。

何卒よろしくお願い申し上げます。

ポイントは、1通目の日付と返事がほしい日を書くことです。これで記録として残り、相手も社内で動きやすくなります。

それでも話が進まない、相手の対応が取適法に当たるか判断がつかない、というときは、自社だけで抱えずに公的な相談先へ相談してください。公正取引委員会の取適法のページに、相談・申告の窓口が案内されています(リンクは記事の終わりの出典にまとめました)。

AIで例文を自社向けに書き直すときの注意

例文を自社の言葉に直すのは、AIが得意な作業です。たとえば、次のように頼みます。

次の例文を、取引歴20年の取引先に送る前提で、もう少しやわらかい表現に直してください。

相手は〇〇業、こちらは〇〇の加工を請け負っています。

法律の名前は出さず、手形・小切手の利用廃止の流れを理由にしてください。

長さは今と同じくらいにしてください。

(ここに例文を貼る)

ただし、支払いのルールについては、次の3点に気をつけてください。

1. AIの知識は、改正前のことがある

AIは、学習した時点までの情報で答えます。支払いのルールは2026年1月に大きく変わったので、AIが改正前の下請法の扱いで答えることがあります。たとえば「書面で合意していれば振込手数料を差し引いてもよい」は、改正前の扱いです。

AIには「文面を整えること」だけを任せ、法律の中身はこの記事の出典や公正取引委員会の資料で確かめる、と役割を分けてください。当社では、AIに書かせた文章の事実確認を、役割を分けて点検する方法で行っています。そのやり方はAIのファクトチェックは役割分担で|指摘約30件、直したのは12件にまとめました。

2. 取引先名・金額・口座番号はAIに入れない

例文を直すだけなら、相手の社名や実際の金額は要りません。〇〇のまま頼めば十分です。とくに無料版のAIでは、入力した内容が学習に使われる設定になっていることがあります。社内でAIを使うときの線引きは、AIの情報漏洩対策、禁止は逆効果で書きました。

3. 契約書の条文と一緒に確かめる

支払条件は、取引基本契約書や発注書に書かれていることが多いです。お願いを出す前に、今の契約で支払条件がどう書かれているかを確かめておくと、話がかみ合います。長い契約書を読むときにAIを使う方法と注意点は、契約書・約款をAIで要約する。丸投げが危ない3つの理由にあります。

価格そのものの改定をお願いしたい場合は、価格改定のお願い 例文|理由別3パターンと取引先に通る書き方をご覧ください。支払条件と価格は、同じ打ち合わせで話すこともできますが、手紙は分けたほうが返事をもらいやすくなります。

自社の都合で納品が遅れてしまうときの連絡は、納期遅延のお詫び 例文|原因・新納期・再発防止の伝え方にまとめました。

この記事で扱っていないこと・ご注意

  • この記事は、2026年10月17日に公開されている公正取引委員会・中小企業庁の資料を読んでまとめたものです。法律の解釈や個別の取引が違反に当たるかどうかの判断は、弁護士または公的な相談窓口にご確認ください
  • 建設業者が請け負った建設工事を、さらに別の会社に委託する取引(再委託)には、取適法は適用されません(よくある質問 Q5。建設業法で別に定められているため)。この場合、この記事の例文は、そのままでは使えません。建設資材の製造や図面作成の委託は、取適法の対象になり得ます
  • 「90日前後」などの日数は、公表されているルールをもとに当社で計算した目安です
  • 当社UMEO CREATEも、システム開発やホームページ制作を受託する、従業員のいない小さな事業者です。例文は、受ける側の立場で書きました

出典(2026年10月17日時点)

この記事の内容は、次の一次情報を2026年10月17日に開いて確認したものです。制度は改定されることがあるので、送る前に必ずリンク先をご確認ください。

まとめ:まず入金明細を1か月分見る

  • 2026年1月1日以降の発注で取適法の対象になる取引は、手形払いが禁止、支払期日は受領から60日以内、振込手数料の差し引きも合意があっても違反
  • 対象かどうかは、取引の内容と、資本金または従業員数で決まる。従業員数の基準が新しく加わった
  • 対象外の取引でも、2027年4月1日から独占禁止法の告示で60日以内が求められる。多くの金融機関は手形の最終振出期限を2026年9月30日にしている
  • お願いはメールか書面で出し、記録を残す。返事がなければ日付を入れて2通目を送る
  • AIは文面を整える係。法律の中身は一次情報で確かめる

まずは直近1か月分の入金明細を開いて、①手形や電子記録債権で受け取っていないか、②納品から入金まで何日かかっているか、③振込手数料が引かれていないか、の3つを見てみてください。どれか1つでも当てはまれば、この記事の例文が使えます。


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