2026.11.02

OJTの動画マニュアルの作り方|台本1つで投影資料と確認表まで

業務効率化動画自社の実践

OJTの動画マニュアルの作り方|台本1つで投影資料と確認表まで

新人に、同じ手順を何度も説明している。教える人によって、言うことが少しずつ違う。紙のマニュアルはあるけれど、誰も開かない。

OJT(職場で、仕事をしながら教えること)の悩みは、だいたいこの3つに集まります。

結論から書きます。OJTの動画マニュアルは、1つの台本から「手順動画・投影資料・確認表」の3つを、同じ番号で作るのがおすすめです。 教える側も覚える側も、いまどこにいるかが分かりやすくなります。 手順動画は、新人が1人で何度でも見返すためのものです。投影資料は、先輩と一緒に画面を映して読むためのもの。確認表は、「見た」を「できた」に変えるためのものです。

この記事では、当社(UMEO CREATE)が自社で作った見本を、実物の画面つきでお見せします。題材は、注文を1つの表に並べて急ぎを知らせる「受注進捗ボード」という仕組みの使い方です。見本のために、架空の会社・架空のデータで作りました。

台本1つから、手順動画・OJT投影資料・A4確認表の3つを作る(見本・架空の会社)
台本1つから、手順動画・OJT投影資料・A4確認表の3つを作る(見本・架空の会社)
この記事の目次(13項目)

手順動画(動画マニュアル)とは

手順動画(動画マニュアル)とは、作業や操作の手順を、1工程ずつ映像と短い説明で見せる教材です。

紙の手順書との違いは2つあります。1つは、手の動きや画面の変化を「そのまま見せられる」こと。もう1つは、新人が自分のペースで止めたり、見返したりできることです。

一方で、動画だけでは足りない場面もあります。動画を見ただけでは、本当にできるようになったかまでは分かりません。だから今回の見本では、動画に投影資料と確認表を組み合わせました。

OJTに動画マニュアルが向く仕事・向かない仕事

先に、向き不向きを書いておきます。何でも動画にすればいい、というわけではありません。

向く仕事向かない仕事
毎回、同じ説明を繰り返している手順がまだ固まっていない
教える人によって、説明が違う年に1回しかやらない作業
画面の操作や、手元の動きが多い毎回、判断が変わる仕事
外国人スタッフや、人の入れ替わりが多い映せる画面がなく、架空のデータでも作り直せない業務

特に「手順がまだ固まっていない」仕事は、動画より先にやり方を決めるほうが先です。動画にした手順が数週間で変わると、作る手間より直す手間のほうが大きくなります。

画面の操作が多い事務の仕事は、動画マニュアルが向いている(画像はAI生成のイメージです)
画面の操作が多い事務の仕事は、動画マニュアルが向いている(画像はAI生成のイメージです)

見本:受注進捗ボードの使い方(2分37秒)

見本の手順動画です。音が出ますので、ご注意ください。

見本の手順動画「受注進捗ボードの使い方」第1版(2分37秒・ナレーションは合成音声・画面の社名や数量は架空です)

この動画は、次の8つの場面でできています。新人が覚える手順は「入れる・読む・進める」の3つです。

場面長さ見せていること
1 ゴール約17秒この動画で分かることと、完成形の表
2 使うファイル約15秒受付フォルダの置き場所と、表の2つのタブ
3 先に覚える言葉約17秒色4つ(遅れ・至急・注意・順調)と「要確認」
4 手順1 入れる約30秒注文書はフォルダへ。電話の注文は受付票に書いて同じ所へ
5 手順2 読む約29秒赤と橙の行から手をつける。要確認は人が確かめる
6 手順3 進める約19秒作業が終わったら、進捗を1段進める
7 朝の使い方約15秒「今日の至急」タブで、今日やることを決める
8 締め約12秒確認表の1〜5を、先輩と一緒に確かめる

台本の全文は694字で、ナレーションは場面の間の無音を含めて2分35秒になりました。最後の余白を入れた動画の長さは2分37秒です。間を含めて、1分あたり約270字が目安になります。

ナレーションは合成音声(AivisSpeech)を使い、動画の最後にもそう表示しています。

手順動画の組み立て方(6つの型)

見本を作るときに守った型は6つです。教材づくりの研究の整理と、当社が現場で決めているルールを合わせています。

1. 最初に「分かること」と完成形を見せる

何に注目すればいいかを先に示すと、学ぶ側は迷いにくくなると考えられています(Mayer 2008の整理)。見本では、題名・3つの手順・完成形の表を、最初の場面にまとめて出しました。

見本の最初の場面。この動画で分かることと、完成形の表を先に見せる(画面は架空のデータです)
見本の最初の場面。この動画で分かることと、完成形の表を先に見せる(画面は架空のデータです)

2. 使うファイルと置き場所を、手順の前に見せる

「どのファイルの、どこを触るのか」が分からないまま手順を見ても、新人は自分の画面で同じ場所にたどり着けません。

見本では、受付フォルダの置き場所(共有ドライブ > 受注 > 01_受付)と、表の2つのタブを、手順に入る前に1場面使って見せています。

使うのは2つ。受付フォルダの置き場所と、表のタブを先に見せる(画面は架空のデータです)
使うのは2つ。受付フォルダの置き場所と、表のタブを先に見せる(画面は架空のデータです)

3. 知らない言葉は、先に1枚で教える

本題の前に主な用語を覚えてもらうと、手順そのものに集中しやすくなるとされています(Mayer 2008の整理)。見本では、色4つと「要確認」の意味を1つの場面にまとめました。

先に覚える言葉。色は納期までの残り日数で自動で付く(画面は架空のデータです)
先に覚える言葉。色は納期までの残り日数で自動で付く(画面は架空のデータです)

4. 1工程ずつ区切り、いま何番目かを出し続ける

区切りが分かると、新人は自分のペースで止めて見返せます(Mayer 2008の整理)。見本では、手順1〜3の間、画面の右上に「1 入れる → 2 読む → 3 進める」を出し続け、いまの手順だけを光らせています。強調の枠も、一度に1か所だけにしました。

5. 手順ごとに「なぜ」を1行入れる

手順だけを覚えると、少し状況が変わったときに判断できません。見本では、3つの手順すべてに「なぜ」を1行入れました。

  • 入れる:入口を1つにすると、拾い漏れが無くなるから
  • 読む:分からない所をAIが推測で埋めないよう、わざと止めてあるから
  • 進める:表が今の状態とずれると、朝の至急が当てにならなくなるから
手順2「読む」。紫の「要確認」は、担当者に確かめてから ○ を付ける(画面は架空のデータです)
手順2「読む」。紫の「要確認」は、担当者に確かめてから ○ を付ける(画面は架空のデータです)

6. 最後は確認表と同じ番号で締め、版と日付を入れる

動画の最後で「確認表の1〜5」を出し、紙の確認表と番号をそろえます。版番号と日付も入れておくと、手順が変わったときに、どれが古いかがすぐに分かります。

長さは、1本1〜3分、長くても6分未満を目安にしています。オンライン講座の約690万回の視聴を調べた研究では、ふつうの速さで見た場合、動画がどれだけ長くても、視聴時間の中央値は最大で6分ほどでした(Guo, Kim & Rubin 2014)。長い手順は工程ごとに分けて、見返したい所だけ見られるようにします。

字幕は「要点」と「全文」の2通り用意する

声で説明している内容を、字幕で全部画面に出すと、声と文字を同時に追うことになり、かえって分かりにくくなることがあると整理されています(Mayer 2008)。ただ当社では、音を出せない現場や、日本語が母語でない人には、全文の字幕が要ると考えています。

そこで見本では、字幕を2通りにしました。

  • 動画の画面には、要点だけの短い字幕
  • 別の字幕ファイルには、全文。音を出せない現場や、日本語が母語でない人に使ってもらう

外国人スタッフに教える場面も増えています。全国の外国人労働者は2025年10月末時点で約257万人、そのうち最も多い製造業が約63万5千人でした(厚生労働省)。

厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」は、安全衛生教育を「母国語等を用いる、視聴覚教材を用いる等」の方法で行うよう求めています。この「母国語等」には、平易な日本語も含まれます。まずは、やさしい日本語の全文字幕から始められます。

OJT投影資料は、動画と同じ画面・同じ番号で作る

投影資料は、先輩と新人が一緒に画面を見ながら読むためのものです。見本では、16:9のスライドを11枚作りました。

  • 1枚に1手順。左に動画と同じ画面、右に「やること」「なぜ」「先輩が見るところ」
  • 手順のあとに「やってみよう」(約10分の演習)を1枚
  • 最後に、資料の置き場所と、版の決まりを1枚

動画と同じ画面を使うので、新人は「さっき動画で見た画面だ」と結びつけられます。動画と資料を別々に作ると、言い回しや画面が少しずつずれていきます。台本を1つにしているのは、このずれを防ぐためです。

OJT投影資料の手順1のスライド。左に動画と同じ画面、右にやることと「なぜ」(見本)
OJT投影資料の手順1のスライド。左に動画と同じ画面、右にやることと「なぜ」(見本)

A4の確認表で「見た」を「できた」に変える

動画を見ただけでは、できるようになったかは分かりません。そこで、A4の確認表を1枚付けました。

No.確認することできた目安
1注文書を受付フォルダに入れた(電話の注文は受付票に書いた)表に1行増えたのを、自分で確かめた
2色4つ(遅れ・至急・注意・順調)の意味を言える残り日数と色を結びつけて言えた
3紫の「要確認」を担当者に確かめて、○を付けた推測で埋めず、誰に聞くかを言えた
4作業が終わった注文の進捗を、1段進めた今の段階と次の段階を言えた
5朝、「今日の至急」タブで今日やることを決めた上から2件、今日やることを口に出して言えた

ポイントは、「できた目安」を書いておくことと、教えた人のサイン欄を設けることです。目安が無いと、「なんとなくできた」で○が付いてしまいます。

A4の確認表。動画・投影資料と同じ番号で、教えた人のサイン欄つき(見本)
A4の確認表。動画・投影資料と同じ番号で、教えた人のサイン欄つき(見本)

作る前に決める4つ

動画を作る作業そのものより、作る前の判断のほうが大事です。当社では、次の4つを先に決めています。

1. どの仕事から作るか:繰り返しが多いか、人によって教え方が違うか、間違えても取り返しがつくか。最初の1本は、取り返しがつく仕事から選びます
2. 何を映さないか:お客様の名前・単価・図面などは映しません。見本では画面を録画せず、架空のデータで画面を作り直しました。社外秘の資料を、無料のAIサービスに入れることもしません
3. どこで人が確かめるか:見本では「要確認は人が確かめる」を、手順そのものに入れました。仕上げでは、現場の責任者に見てもらい、承認してから置きます
4. 手順が変わったらどうするか:版を上げて、動画・投影資料・確認表の3つをそろえて差し替えます。1つだけ直すと、番号がずれます

作って見つけた失敗3つ(コマを並べて確かめる)

見本を作ったあと、動画の途中のコマを18枚並べて、1枚ずつ見ました。すると、通しで流しているときには気づかなかった崩れが3つ見つかりました。

1. 表の文字が欄からはみ出していた:得意先名と注意事項が長く、隣の欄にくっついていました。表示する名前を短くして直しました
2. 画面を寄せた瞬間、上の説明の札が見出しに隠れた:説明の札だけは寄せずに、画面に固定して出すように直しました
3. 納期と残り日数の数字がくっついて読めなかった:2つの間を空けて直しました

どれも、動画を流して見ているだけでは見落としやすいものです。

確認に使ったコマの一覧(見本の動画から9枚)
確認に使ったコマの一覧(見本の動画から9枚)

仕上げの確認として、当社では次の5つを決めています。今回の見本では、このうち「コマを並べて見る」確認までを行いました。実際の会社で使うときは、残りも行います。

  • 音を消して1回通して見る(字幕と画面だけで分かるか)
  • スマホの画面で見る(字が小さすぎないか)
  • その作業をしていない人が、動画だけを見てやってみる
  • 現場の責任者に見てもらい、承認してから置く
  • 1か月後に「見られているか・直す所はないか」を聞く

紙の作業手順書を動画にするときは

ここまでは画面操作の例でしたが、製造などの現場の作業手順書を動画にするときは、撮り方が加わります。

  • 作業する人の目線で、手元を撮る(頭の高さ・肩越し)。大学生が電子回路を組み立てる実験では、作業する人の目線の映像で学んだほうが、組み立ての正確さが上がったという研究があります(Fiorella ほか 2017)
  • 撮るのは3つ。全景(どこで・何を使うか)、手元のアップ、不合格の例
  • スマホは横向きで固定し、メーターや表示の数字が読めるまで寄る
  • 保護具などの安全のための道具が画面に入るように撮る
  • 現場の音は使わない前提で撮り、説明はあとから声で入れる

もう1つ大事なのは、お客様の現物の「良い例・悪い例」を、想像で描かないことです。実物の写真や映像をいただいてから作ります。

現場の作業手順書を動画にするときは、作業する人の目線で手元を撮る(画像はAI生成のイメージです)
現場の作業手順書を動画にするときは、作業する人の目線で手元を撮る(画像はAI生成のイメージです)

よくある質問

手順動画の長さは、どれくらいがいいですか?

1本1〜3分、長くても6分未満を目安にしています。長い手順は工程ごとに分けて、見返したい所だけ見られるようにします。

字幕は、全部出したほうがいいですか?

音を出して見る、日本語が母語の人には、要点だけのほうが分かりやすくなります。音を出せない現場や外国人スタッフ向けには、全文の字幕ファイルを別に用意します。

手順が変わったら、どう直しますか?

版を上げて、動画・投影資料・確認表の3つをそろえて差し替えます。台本を1つにしておくと、3つのどこを直せばいいかが、すぐに分かります。

まとめ

  • OJTの動画マニュアルは、1つの台本から「手順動画・投影資料・確認表」の3つを、同じ番号で作る
  • 手順動画は1本1〜3分。最初に完成形、次に使うファイル、知らない言葉は先に、手順ごとに「なぜ」を1行
  • 字幕は、画面には要点、全文は別ファイル
  • 作る前に「どの仕事から・何を映さないか・どこで人が確かめるか・変わったらどうするか」を決める
  • 仕上げは、コマを並べて見て、音を消して見て、作業していない人にやってもらう

この記事は、連載「属人化を防ぐAI活用」の1本です。OJTのほかに、発注・受注の見える化や操作動画など、「あの人しか分からない仕事」を残す使い方を5つまとめた入口の記事はこちらです。
属人化を防ぐAI活用|「あの人しか分からない仕事」を3分の動画で残す5つの使い方

紙のマニュアルがまだ無い場合は、先にこちらをどうぞ。
マニュアルがない問題をAIと1日で解決する方法

動画づくりで、声と絵の権利に気をつける点はこちらに書きました。
AI解説動画の作り方|YouTubeに3本出して分かった手順と失敗

出典(2026年11月2日時点)

  • Mayer, R. E. (2008). Applying the science of learning: Evidence-based principles for the design of multimedia instruction. *American Psychologist*, 63(8), 760–769.
  • Guo, P. J., Kim, J., & Rubin, R. (2014). How video production affects student engagement: An empirical study of MOOC videos. *Proceedings of the First ACM Conference on Learning @ Scale*. 論文PDF
  • Fiorella, L., van Gog, T., Hoogerheide, V., & Mayer, R. E. (2017). It's all a matter of perspective: Viewing first-person video modeling examples promotes learning of an assembly task. *Journal of Educational Psychology*, 109(5), 653–665.
  • 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」全文PDF
  • 厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」厚生労働省のページ

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