2026.10.11

AIで自動化できない業務とは|なじまない会社が見落とす3業務

AI導入業務効率化中小企業

AIで自動化できない業務とは|なじまない会社が見落とす3業務

「うちは一品一様だから、AIで自動化できない業務ばかりですよ」
「紙とFAXと電話で回っている会社なので、AIはなじまないと思います」

AIの話になると、こうした声を耳にします。お気持ちはよく分かります。毎回ちがう注文、長年の勘、取引先ごとの決まりごと。外から来た道具が、すぐに役に立つようには見えませんよね。

先に結論を書きます。「自社の業務はAIで自動化できない」と感じている会社ほど、実はAIになじむ業務が手つかずで残っています。 なじまないのは会社全体ではなく、仕事の一部です。そして、なじむ部分は、たいてい社長の目に入りにくい場所にあります。

この記事では、中小企業3,892社の調査の数字と、当社(UMEO CREATE)がお手伝いした会社の実例をもとに、次の順番で書きます。AIで自動化できる業務とできない業務の見分け方、「なじまない」と言う会社が見落としやすい3つの業務、そして正直なところ、本当にAIに向かない業務です。

事務所の机でノートパソコンに向かい、見積の数字を打ち込む作業着の男性(画像はAI生成のイメージです)
事務所の机でノートパソコンに向かい、見積の数字を打ち込む作業着の男性(画像はAI生成のイメージです)
この記事の目次(7項目)

自社の業務にAIは「なじまない」と答えた会社は22.2%

まず、同じように感じている会社がどのくらいあるのかを見ておきます。

商工中金が2026年1月に行った「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(有効回答3,892社)は、生成AIの導入や推進の課題、導入しない理由を複数回答で聞いています。その中に「自社の業務に生成AIは馴染まない」という選択肢があり、選んだ会社は22.2% でした。およそ5社に1社です。

この数字を、AIを積極的に使っている会社と、それ以外の会社に分けた集計があります。ここでいう「積極的に使っている会社」は、会社として生成AIを導入しているか、個人で登録した生成AIを仕事に使うよう推奨している会社のことです。

「自社の業務に生成AIは馴染まない」と答えた割合の比較。全体22.2%、積極的に使っている会社6.1%、それ以外の会社29.5%
「自社の業務に生成AIは馴染まない」と答えた割合の比較。全体22.2%、積極的に使っている会社6.1%、それ以外の会社29.5%
課題・導入しない理由全体積極的に使っている会社それ以外の会社
自社業務になじまない22.2%6.1%29.5%
具体的な活用場面が不明35.6%21.5%42.0%

使っている会社で「なじまない」と答えたのは6.1%。使っていない側では29.5%。 およそ5倍の開きがあります。

調査報告書は、この2項目の差が大きいことについて、使い道の例を十分に知ることができていないことが、生成AIの導入を妨げている可能性がある、と書いています。

もちろん、「なじむ業種の会社だから使っている」という逆の読み方もできます。ただ、同じ調査で、使っている会社が実際に何に使っているかを見ると、1位は「メール、報告書、議事録の作成・要約」(74.0%)、2位は「デスクワーク作業支援・自動化」(48.7%)でした。どちらも業種を問わず、どの会社にもある事務の仕事です。

つまり、「なじまない」という感覚の多くは、業種の問題というより、自社のどの仕事に当てはまるかをまだ見たことがない、という状態 だと当社は考えています。

AIで自動化できる業務・できない業務の見分け方

では、どの仕事がなじみ、どの仕事がなじまないのか。当社が業務を見せていただくときは、業種や会社の規模ではなく、1つひとつの作業を次の3つの問いにかけています。

AIで自動化しやすい業務と、難しい業務の特徴を左右に並べた比較表
AIで自動化しやすい業務と、難しい業務の特徴を左右に並べた比較表

1. 「移す」作業か、「決める」作業か

紙に書いてある数字を画面に打ち直す。Aの表の内容をBの表に書き写す。届いた書類を決まった形に並べ替える。これらは「移す」作業です。答えは最初から紙やデータの中にあり、人はそれを運んでいるだけです。

一方、値段をいくらにするか、この注文を受けるかどうか、どの取引先を優先するか。これらは「決める」作業です。AIが得意なのは「移す」ほうで、「決める」ほうは人に残ります。

2. 正解を、人がすぐ確かめられるか

AIは間違えることがあります。ですから、間違えたときに人がすぐ気づける仕事でなければ、安心して任せられません。

元の紙と見比べれば合っているか分かる。合計を足せば検算できる。こういう仕事は任せやすい仕事です。反対に、合っているかどうかを確かめる方法がない仕事は、AIに向きません。

3. 繰り返し発生しているか

毎日、毎週、毎月、同じ形で必ず発生する仕事は、短くできたときの効果が積み上がります。年に1回しかない仕事や、毎回まったく形がちがう仕事は、仕組みをつくる手間のほうが大きくなります。

この3つをまとめると、「繰り返し発生する、正解を確かめられる、移す作業」がAIで自動化しやすい業務 です。逆に、「めったに発生しない」「正解を確かめようがない」「決める作業」のどれかに当たるものが、AIで自動化できない業務、あるいは自動化しないほうがいい業務になります。

大事なのは、1つの会社の中に両方が混ざっている、ということです。「うちは一品一様だから」という会社でも、一品一様なのは製品や工事の中身であって、そのまわりにある書類の仕事まで一品一様とは限りません。

「なじまない」と言う会社が見落としている3業務

「なじまない」の理由として挙がりやすい言い方は、大きく3つあります。「紙とFAXの会社だから」「毎回ちがう仕事だから」「ミスが許されない仕事だから」。ここからは、それぞれに当たる仕事を、当社が実際にお手伝いした事例で紹介します。数字はいずれも、当社サイトの導入事例に掲載している値です。

3つの業務の導入前と導入後の時間。注文書の転記は毎日30分から約5分、見積づくりは1件60分から約5分、勤怠から給与ソフトへの入力は100人分2時間から約5分
3つの業務の導入前と導入後の時間。注文書の転記は毎日30分から約5分、見積づくりは1件60分から約5分、勤怠から給与ソフトへの入力は100人分2時間から約5分

1. 「紙とFAXの会社だから」と言う会社の、注文書の打ち直し

産業機械を扱う商社様の支店でのことです。注文書はFAXとPDFで届き、担当の方がそれを見ながら基幹システムへ手で入力していました。かかっていた時間は毎日30分ほど。紙で届くものは人が打つしかない、と思われがちな仕事です。

ところが、これは典型的な「移す」作業でした。届いた紙の中に、品名も数量も納期もすべて書いてあります。人は、それを画面に運んでいただけです。

紙をスキャンするだけでデータになり、基幹システムへ渡せる形にしたところ、毎日30分かかっていた転記が約5分 になりました。

紙やFAXで仕事が回っている会社は、AIになじまないのではなく、むしろ最初の一手がはっきりしている会社です。 紙で届いたものを打ち直している場所が、そのまま候補になるからです。くわしくは AIで最初に成果が出た業務は「転記」|群馬で支援した6事例の共通点 に書きました。

2. 「毎回ちがう仕事だから」と言う会社の、見積づくり

群馬県内で電気計装工事をされている会社様では、見積書を1件つくるのに約60分かかっていました。工事は現場ごとに内容がちがいます。同じ見積は二度とないのだから機械には任せられない、と考えるのは自然なことです。

けれど、60分の中身を分けてみると、様子が変わります。どの材料を何個使うかを決めるのは、経験のいる「決める」作業です。一方で、材料の単価を調べて拾い出す、数量と単価を掛けて合計する、決まった書式に整えてPDFにする、という部分は「移す」作業でした。

そこで、単価をあらかじめ台帳として持たせ、画面から入力すれば自動で計算し、そのままPDFで出せる仕組みにしました。過去に長年ためてきた見積のデータは、AIで読み解いて新しい仕組みへ引き継いでいます。結果として、1件あたり約60分かかっていた見積づくりが約5分 になりました。

毎回ちがうのは「何を使うか」の判断であって、「単価を拾って計算して清書する」手間は毎回同じでした。一品一様の仕事ほど、判断の前後に、同じ形の作業がはさまっています。

3. 「ミスが許されない仕事だから」と言う会社の、給与計算の前の入力

会計と社会保険労務士の事務所様では、顧問先から届く勤怠の記録を、給与計算ソフトへ手で入力していました。100人規模の会社で、約2時間。給与は1円でも間違えられない仕事です。だからこそ人の目と手でやる、という考え方は、多くの職場にあります。

ここで見直したのは、「人の手で入力すること」と「正しいこと」は同じではない、という点です。2時間かけて100人分の数字を打てば、人も打ち間違えます。そして、打ち間違いを見つけるために、さらに確認の時間がかかっていました。

勤怠のデータを給与ソフトが読み込める形へ自動で変換する仕組みをつくり、100人分で約2時間かかっていた工程が約5分 になりました。人の仕事は「打つこと」から「合計が合っているかを確かめること」に変わっています。

ミスが許されない仕事は、AIになじまない仕事ではなく、検算の仕組みを一緒につくる必要がある仕事です。 件数が合っているか、合計が元の書類と一致するか。確かめ方を先に決めておけば、任せられる範囲は広がります。

事務所のスキャナの前で、紙の書類の束を1枚ずつ確かめる作業着の女性(画像はAI生成のイメージです)
事務所のスキャナの前で、紙の書類の束を1枚ずつ確かめる作業着の女性(画像はAI生成のイメージです)

3つに共通しているのは、社長や担当の方が「うちの仕事の難しいところ」として思い浮かべていた部分ではなく、そのすぐ隣にある、地味な作業が対象だった ということです。難しい判断はそのまま人に残り、その前後の「移す」作業だけが短くなりました。業種ごとの入口のちがいは、AI活用事例を業種別に|中小企業5業種の最初の1業務 にまとめています。

正直に書く、本当にAIで自動化できない業務

ここまで読むと、「結局なんでもAIでできると言いたいのか」と思われるかもしれません。そうではありません。当社がお手伝いする中でも、AIに任せなかった仕事、任せても人の手が残った仕事があります。4つ挙げます。

1. 基準が、人の頭の中にしかない仕事

「このお客様なら、この値段で受ける」「この仕上がりなら出荷してよい」。こうした判断の基準が、紙にもデータにもなっておらず、ベテランの方の頭の中にだけある場合、AIには渡せません。AIに教える材料がないからです。

この場合に先にやることは、AIを入れることではなく、基準を言葉にして書き出すことです。

2. もとのデータが合っていない仕事

これは当社が実際に経験したことです。毎月の集計を自動にする仕組みをつくり、本番で動かしたある月、取り込む直前に人が3か所を手で直しました。

調べてみると、AIの読み取りが外れたわけではありませんでした。1か所は、もとの集計データに、ある方の欠勤が載っていなかったこと。残りの2か所は、当社が組んだ残業時間の計算式の前提が、もとのデータでは成り立っていなかったことが原因でした。

AIは、受け取ったデータを正しく運びます。もとのデータが実態とずれていれば、ずれたまま正しく運びます。 自動にすれば上流の間違いまで直る、ということはありません。むしろ、人が打っていたときには途中で気づいて直していたものが、気づかれずに通ってしまうおそれがあります。

ですから当社は、自動化するときに、合計が元の書類と合うかを確かめる検算を一緒につくるようにしています。あわせて、「先月は数字があったのに、今月は空になっている人がいないか」という見比べも有効です。そのうえで、最後に人が見る時間は残ります。ゼロにはなりません。

3. 件数が少なすぎる仕事

月に1回、10分で終わる作業を自動にしても、浮くのは年に2時間です。仕組みをつくる費用も、覚える手間も、それに見合いません。こういう作業は、今のやり方のままで構いません。当社も「つくらずに済むものは、つくらない」を方針にしていて、開発はせず、すでにある道具の活用をご提案した例もあります。

4. 相手との関係そのものが仕事になっているもの

長年のお客様への電話、現場での一言、謝りに行くこと。文章の下書きをAIに手伝わせることはできますが、誰が伝えるかに意味がある仕事は、人の仕事のままです。ここを機械に置き換えても、会社は良くなりません。

打ち合わせの机で、紙の資料を間に置いて話し合うスーツの男性と作業着の男性(画像はAI生成のイメージです)
打ち合わせの机で、紙の資料を間に置いて話し合うスーツの男性と作業着の男性(画像はAI生成のイメージです)

自社の業務がAIになじむかを確かめる5つの手順

「なじむ仕事もありそうだ」と感じた方のために、確かめる手順を書いておきます。AIの契約も、道具の比較も、まだ要りません。紙とペンで足ります。

手順1. 1週間の作業を書き出す

事務の担当の方に、1週間でやっている作業を、思いつくまま書き出してもらいます。「注文書を入力する」「請求書をつくる」「勤怠をまとめる」といった粒で十分です。やり方は AIに任せる仕事の見つけ方|30分の業務棚卸し にあります。

手順2. 「移す」作業に印をつける

書き出した中から、紙や別の画面を見ながら打ち直している作業、同じ数字を2回書いている作業に印をつけます。ここが候補です。

手順3. 1回に何分かかっているかを聞く

印をつけた作業について、「1回に何分くらいかかっていますか」と担当の方に聞いて、書き留めます。月に何時間になるかを計算すると、どれから手をつけるかが決まります。

手順4. 一番大きい1つだけを試す

全部を一度にやろうとしないでください。一番時間のかかっている1つだけを選びます。

手順5. 1か月後の合格ラインを先に決める

「30分が15分以下になっていたら続ける。ならなければやめる」というように、線を先に引いておきます。試した結果、その仕事には向かなかったと分かることも、立派な収穫です。効果の確かめ方は、AI導入が定着しない原因|誰も使わないのは道具のせいではない にくわしく書きました。

まとめ:AIで自動化できない業務は会社全体ではなく、仕事の一部

  • 「自社の業務に生成AIは馴染まない」と答えた中小企業は 22.2%。積極的に使っている会社では6.1%、それ以外の会社では29.5%でした(商工中金 2026年1月調査)
  • 見分け方は3つ。「移す」作業か「決める」作業か/正解を人が確かめられるか/繰り返し発生しているか
  • 見落とされやすい3業務は、紙で届く注文書の打ち直し/見積づくりの中の拾い出しと計算/給与計算の前の入力。いずれも、難しい判断のすぐ隣にある作業です
  • 本当に向かないのは、基準が頭の中にしかない仕事/もとのデータが合っていない仕事/件数が少なすぎる仕事/相手との関係そのものが仕事になっているもの

「うちにはなじまない」と感じたときは、会社全体ではなく、作業を1つずつ見てみてください。なじまない仕事が残るのは当たり前で、それは人がやるべき仕事です。そのまわりにある「移す」作業が、最初の候補になります。

「どの作業が候補になるのか、自分たちでは見分けがつかない」という場合は、業務ごとにかかっている時間を一緒に洗い出す 無料の簡易業務診断 もご利用いただけます。

出典(2026年10月11日時点)

調査の数字は更新されます。最新の内容は、必ず一次情報でご確認ください。

  • 株式会社商工組合中央金庫「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」 https://www.shokochukin.co.jp/report/data/assets/pdf/futai202603.pdf
  • 調査の概要: 調査時点は2026年1月1日、対象は同金庫の取引先中小企業、有効回答数3,892社
  • 生成AI導入・推進における課題/導入しない理由(複数回答): 具体的な活用場面が不明35.6%/自社業務になじまない22.2%(調査票の選択肢は「自社の業務に生成AIは馴染まない」)
  • 活用状況別の集計: 「自社業務になじまない」は積極活用層6.1%(n=1,144)・積極活用層以外29.5%(n=2,522)。「具体的な活用場面が不明」は積極活用層21.5%・積極活用層以外42.0%
  • 積極活用層の活用事例(複数回答): メール/報告書/議事録の作成・要約74.0%/デスクワーク作業支援・自動化48.7%
  • 当社の事例の数字(注文書の転記 毎日30分から約5分/見積1件あたり60分から約5分/100人分の給与計算 2時間から約5分)は、当社サイトの導入事例ページに掲載している値で、導入前後の作業時間をもとにした概算です https://www.umeocreate.com/works.html

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UMEO CREATE(ウメオクリエイト)では、群馬県(高崎・前橋・太田・伊勢崎・吉岡町など)を中心に、中小企業や個人事業主・ひとり社長様向けの「AI導入・業務自動化・DX伴走コンサルティング」を行っています。

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