「AIを使ったほうがいいのは分かるけど、うちの何に使えばいいのか分からない」
セミナーや訪問先で、いちばん多くいただくご相談がこれです。ツールの名前は知っている。無料で試せることも知っている。でも、自分の会社の仕事に当てはめようとした瞬間に手が止まってしまう。すごく、よく分かります。
原因はシンプルで、「今どんな仕事をしているか」が言葉になっていないからなんです。頭の中にはあるけれど、書き出したことがない。相手(AI)に見せられる形になっていないので、相談のしようがない。
逆に言えば、そこさえ用意できれば話は早いです。今日は、紙とスマホだけで30分あればできる「業務の棚卸し」のやり方を紹介します。順番どおりに進めるだけで、明日から任せられる仕事が1つ見つかるところまで行けます。
ステップ1(15分)まず「先週やったこと」を書き出す
いきなり業務一覧を作ろうとすると、かならず固まります。網羅しようとするからです。
そうではなく、先週の自分の1週間を思い出して、やったことを箇条書きにするだけ。順番も粒度もバラバラで構いません。「見積書つくった」「電話に折り返した」「請求書を郵送した」「シフト表を直した」。この雑さでいいんです。
こんな時に便利です。
「何を書けばいいか分からない」と手が止まったら、AIに質問役をやってもらいましょう。自分で思い出すより、聞かれたほうが出てきます。
話しかけ例文
「私は従業員10名の建設会社で、社長として経理も総務もやっています。1週間の業務を棚卸ししたいので、思い出しやすいように質問してください。1回につき1問だけ、順番に聞いてください」
1問ずつ聞いてくれるので、答えていくうちに勝手にリストが埋まっていきます。10分もあれば20個くらいは出てくるはずです。
ステップ2(10分)AIに「仕分け」してもらう
書き出したリストを、そのままAIに貼り付けます。ここでのお願いは「効率化して」ではありません。仕分けだけをお願いします。
話しかけ例文
「次のリストは、私が1週間にやっている仕事です。これを3つに仕分けてください。
A:AIにほぼ任せられる(文章づくり・要約・下書き)
B:AIが半分手伝える(判断は人、作業は機械)
C:人がやるべき(対面の判断・信頼関係・責任のいる決裁)
仕分けの理由も一行ずつ添えてください」
ポイントはCをちゃんと作らせることです。「全部AIでできます」と言われても現場では使えません。人がやるべき仕事がはっきりすると、逆にAに回せるものへ迷いなく手が伸びます。
ここで出てくるAの中身は、だいたい似ています。お知らせ文、メールの下書き、議事録、報告書のたたき台、マニュアルの文章。文字を書く仕事は、ほぼ全部Aに入ります。
ステップ3(5分)「最初の1つ」だけを決める
仕分けが終わると、任せられそうな仕事が5つも6つも並びます。ここで全部やろうとすると、たいてい全部が中途半端になります。選ぶのは1つだけです。
選ぶ基準は3つ。①毎週やる(頻度が高い)②毎回30分以上かかる③間違えても致命傷にならない。この3つを満たすものが、最初の1歩に向いています。
話しかけ例文
「Aに仕分けた仕事の中から、①週1回以上ある ②1回30分以上かかる ③ミスしても取り返しがつく、の3条件で点数をつけて、上位3つを理由つきで教えてください」
「いちばん困っている仕事」から手をつけたくなりますが、そこは大抵いちばん難しい仕事です。まずは確実に勝てる1つでAIに慣れる。これが遠回りに見えていちばん早い道でした。
やってしまいがちな失敗
ひとつだけ、私自身の失敗も書いておきます。
以前は「この道具が便利だから使いましょう」という入り方をしていました。結果、導入したのに使われない、成果の話がかみ合わない、ということが起きました。道具から入ると、痛みのない場所に道具を置くことになるんです。
棚卸しを先にやる意味はここにあります。順番は、困りごと → 任せられるか → 道具。この順番を守るだけで、失敗はぐっと減ります。
まとめ
業務の棚卸しは、難しく考えなくて大丈夫です。
1. 先週やったことを箇条書きにする(15分)
2. AIにA・B・Cで仕分けてもらう(10分)
3. 頻度・時間・安全さで最初の1つを決める(5分)
30分です。会議1本ぶんの時間で、「うちの何にAIを使うか」がはっきりします。しかも書き出したリストは、来年また使えます。
皆さんの会社では、どの仕事がいちばん「これ、誰かに代わってほしい」と思う仕事でしょうか。次回もお楽しみに。