「AIを入れて、結局どれくらい良くなったんですか?」
AIの導入をお手伝いしていると、経営者の方から必ずと言っていいほど聞かれる質問です。そして、答えにいちばん困る質問でもあります。
「便利になりました」「社員の負担が減りました」と答えることはできます。でも、それでは聞いた側は判断できません。続けるべきか、ほかの業務にも広げるべきか、そもそも払った費用に見合っていたのか。経営の判断に使えるのは、数えられる数字だけです。
当社(UMEO CREATE)は、群馬で代表ひとりでやっている会社です。中小企業やひとり社長のAI導入・業務の仕組みづくりをお手伝いしています。
当社のホームページの導入事例のページでは、どの事例も「作業時間がどれだけ減ったか」を一番大きな文字で載せています。「1件60分 → 約5分」「月 約6時間 → ゼロ」といった形です。
この記事では、なぜ「時間」で載せているのか、その数字をどう数えているのか、そしてAI導入の効果測定を自社でやるときの手順を、当社の事例の数字のまま書きます。
紙の注文書を手に持ち、画面の表と見比べながら入力している手元(写真はAIによるイメージです)
この記事の目次(9項目)
AI導入の効果測定は、なぜ「作業時間」なのか
AI導入の効果を測る物差しはいくつかあります。売上、ミスの件数、社員の満足度、作業時間。その中で当社が作業時間を選んでいる理由は3つです。
1. 誰が聞いても同じ意味になる
「業務効率が30%改善」と言われても、何の30%なのかが人によって違って聞こえます。一方で「毎日30分かかっていた注文書の転記が、約5分になった」は、社長が聞いても、現場の担当者が聞いても、同じ場面が浮かびます。
数字は、聞いた人が自分の会社に置き換えられるときに初めて役に立ちます。時間はその置き換えがいちばんしやすい物差しです。
2. 導入の前と後で、同じ物差しが使える
売上は、景気や季節や取引先の事情で上下します。AIを入れた月に売上が伸びても、それがAIのおかげかどうかは分かりません。
作業時間なら、同じ作業を導入の前と後で比べるだけです。外の事情に左右されにくく、「この作業に限っては、これだけ減った」と言い切れます。
3. お金に直せる
時間は、時給を掛ければお金になります。お金になれば、「この仕組みに払った費用は何か月で取り戻せるか」が計算できます。
AI導入を続けるか止めるかの判断は、最後は費用の話になります。だから当社は、効果を最初からお金に直せる形で数えるようにしています。
導入事例ページに載せている数字
導入事例のページには、いま6件を載せています。社名は掲載のご許可をいただいた会社だけで、それ以外は守秘のため業種でご紹介しています。
| 会社 | 対象の作業 | 導入前 → 導入後 | 数字の単位 |
|---|
| 朝倉電設株式会社様(群馬県桐生市) | 見積書づくり | 60分 → 約5分 | 見積1件あたり |
| 産業機械商社様 | FAX・PDFで届く注文書の転記 | 30分 → 約5分 | 毎日 |
| 会計・社労士事務所様 | 勤怠を給与ソフトへ入力 | 2時間 → 約5分 | 100人分 |
| 一般社団法人 徳栄会様(群馬県太田市・栃木県足利市) | 納品書・請求・勤怠の転記 | 約6時間 → ゼロ | 1か月あたり |
| 株式会社クアッズ様(群馬県高崎市) | 紙のタイムカードの集計 | 月末の集計作業 → ゼロ | 月末の作業 |
| 金属加工メーカー様 | AI勉強会(開発はしていない) | 参加者全員から「使ってみたい」の声 | 時間では数えていない |
ページには「数字は導入前後の作業時間をもとにした概算です」と書き添えています。
事例ごとの中身は、以前の記事「AIで最初に成果が出た業務は『転記』」で詳しく書きました。今回見ていただきたいのは中身ではなく、表のいちばん右の列です。
数字の数え方。当社が決めている4つのこと
表の右端を見ると、単位がそろっていないことに気づかれると思います。1件あたり、毎日、100人分、1か月あたり。ここには理由があります。
1. 単位は「その作業が発生する単位」に合わせる
見積書は、1件ごとに発生します。注文書の転記は、毎日発生します。給与の入力は、従業員の人数分だけ発生します。
これを無理に「月◯時間」にそろえると、件数の見込みという仮定が1つ増えます。仮定が増えるほど、数字は嘘に近づきます。だから当社は、作業が実際に発生する単位のまま載せています。
読む側にとっても、このほうが置き換えやすいはずです。「うちは見積が月40件あるから」と、自社の件数を掛ければ済むからです。
2. 「概算です」と書く
事例の数字は、ストップウォッチで何十回も計って平均を出したものではありません。導入前後の作業時間をもとにした概算です。
それなら最初から「概算」と書いておく。盛った数字は、一度ばれると残りの数字まで信用されなくなるからです。60分が実は55分だったとしても、「概算」と書いてあれば読む人を裏切りません。
3. 数字は、現場の方に出していただく
当社が「速くなりました」と言うより、毎日その作業をしている方が「前は30分かかっていたのが、今は5分くらい」と言うほうが、ずっと説得力があります。
そこで当社は、これからのご依頼では、数字を当社が測るのではなく、現場の担当者に出していただくことにしています。導入の前に1件何分かを伺っておき、本番で使い始める直前に、同じ方にもう一度測っていただく。そして「誰に・いつ伺った数字か」を記録に残す。事例の数字の確かさを、もう一段上げるための決めごとです。
4. 時間で数えられないものは、数字を作らない
表の最後の金属加工メーカー様の事例には、時間の数字がありません。この事例は、システムを作ったのではなく、一度止まっていたAI活用を社内で再開するための勉強会だったからです。
ここで「業務効率◯%向上の見込み」のような数字を作ることはできます。でも、それは測った数字ではありません。だから実際に起きたこと(参加者全員から「使ってみたい」という声が出た)だけを書いています。
数えられないものに数字を付けない。これも、ほかの事例の数字を信じていただくための決めごとです。
AI導入の効果測定でよくある落とし穴
会議室で、ホワイトボードの前に立った一人が同僚に説明している様子(写真はAIによるイメージです)
ここからは、自社で効果を測るときに気をつけたい点です。AI導入の効果測定について書かれた記事を読み比べると、共通して挙げられている注意点があります。当社の経験とあわせて4つにまとめます。
落とし穴1. 導入した後になって、前の時間を思い出そうとする
いちばん多い失敗がこれです。導入して楽になってから「前は何分かかっていたっけ」と聞いても、正確には思い出せません。人は楽になると、前の苦労を小さく覚えがちです。
前の時間は、導入する前に聞いておく。 効果測定の勝負は、ここでほぼ決まります。
落とし穴2. AIの結果を確かめる時間を数え忘れる
AIは間違えることがあります。紙の書類を読み取らせれば、数字を1桁読み違えることもあります。だから人が確かめる工程は残ります。
この確かめる時間を数えずに「AIの処理は10秒で終わる」と言っても、それは効果ではありません。人が手を離せるまでの時間で比べるのが正直な数え方です。
落とし穴3. 件数を掛けずに「1件あたり」だけを見る
1件あたり90%減っても、その作業が月に2件しかなければ、減るのは月に数十分です。仕組みを作る費用を取り戻すには、何年もかかるかもしれません。
1件あたりの時間と、月に何件あるか。必ず両方を掛けてから判断します。当社が「件数が少ない作業はAIに寄せないほうがよい」とお伝えすることがあるのは、このためです。
落とし穴4. 時間しか見ない
時間は分かりやすい物差しですが、それだけでは見えないものもあります。たとえば徳栄会様では、時間が減っただけでなく、管理者の方が離れた場所からでも当日の勤怠と点呼の状況を確かめられるようになりました。
朝倉電設様では、PCのOSが更新されるたびに見積システムが止まる、という問題が解消しました。こうした変化は「何分」では表せません。時間を主役にしつつ、時間以外に変わったことも書き添える。事例ページの詳しい中身では、そうしています。
自社で今日からできる、効果測定の手順
小さな店舗のカウンターで、店主がスマートフォンを見ながら伝票を処理している様子(写真はAIによるイメージです)
AIを入れる予定がまだなくても、次の手順は今日から始められます。費用はかかりません。
手順1. 「手で打ち直している作業」を3つ書き出す
紙を見ながら画面に打ち込んでいる作業、同じ数字を2か所に入れている作業、月末だけ特定の人に集中する作業。このあたりから3つ選びます。
手順2. 担当の方に「1件何分」と「月に何件」を聞く
ポイントは、その作業をしている本人に聞くことです。本人でないと、書類を探す・確かめる・やり直すといった細かい手間が抜けがちです。可能なら、次にその作業をするときに一度だけ時間を計ってもらいます。
手順3. 掛け算して、お金に直す
1件の時間 × 月の件数で、月の時間が出ます。それに時給を掛けます。
たとえば、毎日30分かかっていた転記が約5分になった産業機械商社様の例で試算してみます。1日あたり25分の短縮で、月20日働くとすると、月に約8時間20分です。群馬県の最低賃金(2026年10月3日から時間額1,120円)で計算しても、月に約9,300円になります。実際の人件費は最低賃金より高いので、本当の金額はもっと大きくなります。
※この試算は、事例ページの「毎日30分 → 約5分」に、当社が仮に月20日を掛けたものです。
手順4. 数字を書いた日と、聞いた相手を残す
「2026年10月31日、担当の◯◯さんに確認。1件約5分、月約100件」のように、日付と相手を残しておきます。半年後に効果を確かめるとき、比べる相手が残っているかどうかで、話の確かさがまるで変わります。
効果を誰も確かめないまま進めると、せっかく入れた仕組みが使われなくなっていきます。その話は「AI導入が定着しない原因」に書きました。
測るところから、ご一緒できます
ここまでの手順は、自社だけで十分にできます。ただ、「どの作業から測ればいいか分からない」「書き出してはみたが、どれにAIが向くのか判断できない」という段階で止まる会社も少なくありません。
当社の主な入口は次のとおりです。
| メニュー | 内容 | 料金(税別) |
|---|
| 無料の簡易業務診断 | 15分ほどで、どの業務に月いくら掛かっているかを試算 | 無料 |
| AIエージェント導入支援 | まず1つの業務にAIを入れて効果を確かめる | 10万円 |
| 業務システム開発 | 業務に合わせた仕組みを作る | 1ツール50万円から |
全て一例です。ご予算に合ったプランのご提案が可能です。料金の全体は料金ページに、診断の中身は無料の簡易業務診断のページに載せています。
これからのご依頼では、最初に「その作業、いま1件何分かかっていますか」と伺い、導入した後に同じ質問をもう一度することにしています。その2つの答えが、次の導入事例になります。
導入事例の一覧は、こちらのページにまとめています
この進め方が向かない方
正直に書きます。次のような方には、当社の数え方は合わないかもしれません。
- 売上や利益の伸びで効果を約束してほしい方:当社は作業時間で効果を数えます。売上は外の事情で動くため、AIの効果として約束することはしません
- 作業の時間を、現場の方に聞くことができない方:数字は現場の方に出していただくのが前提です。ここを省くと、数字の確かさを保証できません
- 月に数件しか発生しない作業を自動化したい方:件数を掛けると、仕組みを作る費用に見合わないことが多いです。その場合は「今のままのほうが安いです」とお伝えします
逆に、「AIを入れたら本当に楽になるのか、数字で確かめてから決めたい」という方には、いちばん合う進め方だと考えています。
まとめ
- AI導入の効果は、作業時間で測るのがいちばん伝わりやすい。誰が聞いても同じ意味になり、導入前後を同じ物差しで比べられ、お金に直せる
- 当社の導入事例は、作業が発生する単位(1件・毎日・100人分・1か月)のまま載せ、「概算」と明記している
- 数字は当社ではなく現場の方に出していただき、誰にいつ伺ったかを残す。時間で数えられない事例には数字を作らない
- 効果測定の落とし穴は、前の時間を後から思い出す・確かめる時間を数え忘れる・件数を掛けない・時間しか見ないの4つ
- 今日からできるのは、手で打ち直している作業を3つ書き出し、本人に1件何分と月何件を聞いて、掛け算してお金に直すこと
出典(2026年10月31日時点)
- 朝倉電設株式会社様 https://www.umeocreate.com/works/estimate-system.html
- 産業機械商社様 https://www.umeocreate.com/works/branch-dx.html
- 会計・社労士事務所様 https://www.umeocreate.com/works/payroll-automation.html
- 一般社団法人 徳栄会様 https://www.umeocreate.com/works/care-attendance.html
- 株式会社クアッズ様 https://www.umeocreate.com/works/line-attendance-bot.html
- 金属加工メーカー様 https://www.umeocreate.com/works/ai-workshop.html
【群馬・北関東の中小企業・ひとり社長のAI導入をサポート】
UMEO CREATE(ウメオクリエイト)では、群馬県(高崎・前橋・太田・伊勢崎・吉岡町など)を中心に、中小企業や個人事業主・ひとり社長様向けの「AI導入・業務自動化・DX伴走コンサルティング」を行っています。
「自社の業務でもAIを使える?」「何から手をつければいいかわからない」「面倒な事務作業を自動化したい」といったご相談は、お気軽に公式LINEまたはWebサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。