「AIを使ったほうがいいのは分かっています。でも、そもそもAIって何なんですか」
セミナーや無料の業務診断でお会いする経営者の方から、いちばん多くいただく質問がこれです。しかも、たいてい少し申し訳なさそうに聞かれます。今さら聞けない、という空気があるのだと思います。
でも、この質問はまったく恥ずかしいものではありません。むしろここを飛ばしたままツールだけ導入した会社ほど、続かずに止まっています。何をしている道具なのか分からなければ、任せる範囲も決められないからです。
先日、10月のセミナー準備でAIの入門解説を40本ほど並べて見比べました。その結果、説明の順番さえ間違えなければAIは3分で腹落ちするという手応えがありました。今日はその順番のまま書いてみます。
その1:あなたは今日、もうAIを5回は使っている
最初に、いちばん多い誤解をほどきます。「うちはまだAIを使っていない」という前提です。
次の5つは、すべてAIです。
- スマホの顔認証でロックが解除される
- 迷惑メールが自動で振り分けられる
- 地図アプリが到着時刻を予測する
- ネットショップにおすすめ商品が並ぶ
- 動画サイトが次に見る動画を出してくる
ほとんどの方が、今日すでに何回か使っているはずです。AIは新しく買ってくるものではなく、もう生活の中で動いているものです。ここが分かるだけで、身構える気持ちがかなり下がります。
その2:AIがやっているのは「ルール探し」だけ
では、その裏側で何が起きているのか。ひとつクイズにお付き合いください。
1を入れると3が出ます。2を入れると5が出ます。3を入れると7が出ます。どんなルールでしょうか。
答えは「2倍して1を足す」です。数秒で解けたと思います。AIがやっているのは、これとまったく同じことです。ただし桁違いに多いデータで、桁違いに複雑なルールを探します。
実務に寄せるとこうなります。アイスクリーム屋さんが「気温30度・湿度60%の日は売上100万円」「気温15度・湿度80%の日は売上30万円」というデータを大量に渡すと、AIは「湿度が低い日は売上が伸びる」というパターンを自分で見つけ出します。誰も教えていないのに、です。
そして、この「ルールを見つける作業」を、AIの世界では「学習」と呼びます。
ここが誤解の生まれやすい場所です。学習と聞くと子どもが賢くなっていく姿を想像しますが、実態はかなり地味です。100人分の身長と体重を点で打った散布図に、いちばんよく当てはまる直線を1本引く。これで身長から体重を予測するAIが完成します。この直線こそがAIです。
拍子抜けするかもしれません。でもこの地味さを知っていることが、AIを冷静に使えるかどうかの分かれ目になります。
その3:「それAIですか?」の線引き
ここまで分かると、次に必ず出てくるのがこの質問です。群馬県の製造業のお客様を訪ねると、ほぼ毎回いただきます。「うちの検査機はAIですか」
判定の基準は2つだけ覚えてください。
① 電卓との違い=自分で学習するかどうか
電卓は「1+1」を押されたら2を返します。決められた手順どおりに動いているだけで、どれだけ使っても電卓が賢くなることはありません。データから自分でルールを見つけて変わっていくかどうか。これがプログラムとAIの決定的な違いです。
② 工場のロボットとの違い=体か、脳か
「右に動いて、掴んで、持ち上げる」アーム。あらかじめ書かれた手順どおりに動いているのでAIではありません。ただしカメラで撮った画像から不良品を見分けている部分があれば、そこは画像認識AIです。
つまり、ロボットは体、AIは脳。同じ装置の中に、AIである部分とそうでない部分が同居しています。「うちの検査機はAIですか」への答えは、たいてい「半分はそうです」になります。
その4:用語は「入れ子」で整理すれば覚えなくていい
AI、機械学習、ディープラーニング、生成AI。この4つがごちゃごちゃになりがちですが、暗記は要りません。入れ子になっているだけです。
AI > 機械学習 > ディープラーニング > 生成AI
大きい円の中に小さい円が順番に入った絵を思い浮かべてください。いちばん外側が「AI」という広い呼び名。その中の一手法が「機械学習」、さらにその中の発展形が「ディープラーニング」。話題の ChatGPT や Gemini は、いちばん内側の「生成AI」です。
もうひとつ、AIができることは4つしかありません。
1. 見分ける(不良品かどうか、誰の顔か)
2. 数字を予測する(来月の売上、到着時刻)
3. 分類する(このメールは迷惑メールか、この問い合わせはどの部署か)
4. 作り出す(文章、画像、要約)
上の3つは、すでにあるデータを分析する力です。4つ目の「作り出す」だけが新しく、それが生成AIにあたります。
この4分類は、そのまま自社の棚卸しに使えます。「うちの困りごとは、この4つのどれだろう」と考えると、任せられる仕事が具体的に見えてきます。
会社で使うときに、これだけは押さえる
最後に、仕事で使う方向けの注意点を3つだけ。
① AIは人間の脳とは別物です。「脳を真似た仕組み」と説明されることがありますが、正確には「脳の仕組みをヒントにした」もの。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の資料でも、実際の脳とはかなり異なると明記されています。言い過ぎると、AIに人格があるかのような誤解と「だから止められない」という不安の両方が生まれます。崇めないことが使いこなす第一歩です。
② 生成AIは「次に来そうな言葉」を選んでいるだけです。 正解を調べて出しているわけではないので、堂々と間違えます。テストで分からない問題を空欄にすると0点だから、それらしい答えを書き込む。あの状態に近いと考えてください。誤りは減っていますが、無くなってはいません。確認の工程は外さないでください。
③ 分析系と生成系を混ぜない。 「AIで在庫を減らしたい」は分析系、「AIで文書を作りたい」は生成系。得意分野もツールも別なので、混ぜたまま相談すると話が噛み合いません。
まとめ
そもそもAIとは何か。3分で押さえるなら、こうです。
1. 顔認証や迷惑メールフィルタなど、もう毎日使っている
2. やっていることはデータからのルール探し。それを「学習」と呼ぶ
3. 自分で学習するかどうかがAIの線引き。ロボットは体、AIは脳
4. 用語は入れ子。できることは見分ける・予測する・分類する・作り出すの4つだけ
まずは自社の困りごとを4つのどれかに当てはめてみてください。見分けたいのか、予測したいのか、分類したいのか、作りたいのか。ここが決まれば、次に選ぶ道具は自然に絞れます。
次は「AIに入れてはいけない情報」の話を書く予定です。仕組みが分かった直後こそ、押さえておく価値があります。
【群馬・北関東の中小企業・ひとり社長のAI導入をサポート】
UMEO CREATE(ウメオクリエイト)では、群馬県(高崎・前橋・太田・伊勢崎・吉岡町など)を中心に、中小企業や個人事業主・ひとり社長様向けの「AI導入・業務自動化・DX伴走コンサルティング」を行っています。
「自社の業務でもAIを使える?」「何から手をつければいいかわからない」「面倒な事務作業を自動化したい」といったご相談は、お気軽に公式LINEまたはWebサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。