2026.08.28

補助金をAIに聞くと古い金額が返る。公募要領の正しい読ませ方

補助金・助成金AI活用

補助金をAIに聞くと古い金額が返る。公募要領の正しい読ませ方

補助金の公募要領を開いてみたことはありますか。数十ページのPDFで、専門用語と例外規定がびっしり並んでいます。「うちが対象なのかどうか、それだけ知りたいだけなのに」と思いながらスクロールして、途中で疲れて閉じてしまう。その繰り返しで、気づけば締切が過ぎている。中小企業の経営者や、ひとり社長の方から本当によく聞くお悩みです。

これはAIが得意な仕事です。ただし、やり方をひとつ間違えると、堂々と間違った金額を教えてくれます。 実際に私が踏んだ失敗から書きます。

まずやってはいけないこと。「この補助金いくらもらえる?」と聞く

一番手軽で、一番危ないのがこれです。

私は2026年8月に、お客様へご案内するために国の補助金3件を調べ直しました。そのときAIの回答と公式サイトを1つずつ突き合わせたのですが、金額がずれていました。

具体例を出します。中小企業省力化投資補助金の「カタログ注文型」は、従業員5名以下の会社の補助上限額が 200万円(賃上げ要件を達成した場合は300万円) です。ところがAIに聞くと 500万円(750万円)返ってくることがありました。

嘘をついているわけではありません。2026年3月19日の制度改定で、小さい事業者の上限額が引き下げられたのです。500万円というのは改定前の数字で、その頃に書かれた解説記事がインターネット上にたくさん残っています。AIはそれを覚えていて、自信満々に古いほうを答えます。

同じことが日程でも起きます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は第1回の応募スケジュールが一度延期されており、公式サイトでは当初日程に取り消し線が引かれています。それでも古い日程を載せたままのページは残っています。

補助金は、金額と締切をひとつ間違えただけで話が全部ひっくり返る世界です。ここをAIの記憶に頼ってはいけません。

正解は「AIの記憶」ではなく「目の前の資料」を読ませること

ではAIは使えないのかというと、逆です。読む係としては最強です。

コツはひとことで言えます。聞くのではなく、読ませる。 公募要領のPDFを自分でダウンロードして、そのファイルをAIに渡し、「このファイルの中から答えて」と指示する。これだけで、古い記憶を持ち出す余地がなくなります。

以下の3ステップで、自社が対象かどうかの当たりが10分でつきます。

ステップ1: 公式サイトから公募要領PDFを落とす(1分)

解説サイトやAIの検索結果ではなく、必ず事務局の公式サイトから取ります。中小企業向けで話題に出やすいのは次の3つです。

各サイトの「資料ダウンロード」に公募要領のPDFがあります。開いて読む必要はありません。落とすだけです。 読むのはAIの仕事です。

ステップ2: PDFを渡して、自社の情報とセットで聞く(5分)

GeminiでもChatGPTでも構いません。PDFを添付して、次のように聞きます。自社の情報を先に書いてしまうのがコツです。

添付は◯◯補助金の公募要領です。
このPDFに書かれている内容だけを根拠に答えてください。
PDFに書かれていないことは「記載なし」と答えてください。

【当社の情報】
・業種: 金属加工業
・従業員数: 8名
・法人/個人: 法人
・やりたいこと: 受注管理をクラウド化して、手書き伝票をなくしたい
・投資予定額: 200万円くらい

【聞きたいこと】
1. 当社は申請の対象になりますか。対象なら根拠のページ番号を書いてください
2. 当社の従業員数だと、補助上限額と補助率はいくらですか
3. やりたいことは補助対象の経費に入りますか
4. 申請の締切日はいつですか
5. 申請前に取得や準備が必要なものは何ですか

「PDFに書かれていることだけを根拠に」「書かれていないことは記載なしと答えて」の2行が効きます。 これを入れないと、AIは足りない分を過去の記憶で埋めてしまいます。ページ番号を出させるのも同じ理由で、後から自分で現物を確認できるようにするためです。

ステップ3: 「対象外になる条件」を先に聞く(3分)

ここが一番おすすめの質問です。

このPDFの中から、「対象外」「補助対象になりません」「申請できません」書かれている条件をすべて箇条書きで抜き出してください。
そのうえで、当社が引っかかりそうなものに印を付けてください。

補助金は、もらえる条件よりも外れる条件のほうが人を落とします。 例えば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「革新的新製品・サービス枠」は、既存の製品やサービスの生産プロセスを改善するだけの事業は対象外ですし、単に機械やシステムを導入するだけのものも該当しません。ここを最初に知っていれば、そもそも書類を作り始めずに済みます。

同じ流れで、補助金を受けた後の義務必ず聞いてください。上記の補助金では、3年から5年の事業計画で「付加価値額の年平均成長率+4.0%以上」「1人あたり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上」「事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上高い水準」をすべて満たす必要があり、目標未達の場合は補助金の一部または全額の返還義務が生じる場合があります。 もらって終わりではないのです。

10分でわかること、わからないこと

この方法で分かるのは「自社が土俵に乗っているかどうか」までです。ここで足切りできれば十分に元が取れます。

一方で、採択されるかどうかの見込みや、経費が実際に認められるかどうかの最終判断はAIには出せません。 そこから先は、各補助金のコールセンターや、認定支援機関・商工会議所の窓口にご相談ください。AIの回答をそのまま持ち込むのではなく、「公募要領のこのページを読んでこう理解したのですが、合っていますか」と確認するすると、相談の質も一気に上がります。

ちなみにこの「PDFを渡して、書いてあることだけを根拠に答えさせる」型は、補助金だけのものではありません。契約書、保険の約款、機械の取扱説明書、行政からの通知文でもそのまま使えます。分厚くて読みたくない書類が届いたら、まず渡してみてください。

まとめ

  • AIに「この補助金いくら?」と直接聞かない。改定前の古い金額を自信満々に答えることがある(実例: 省力化投資補助金カタログ注文型の5名以下は200万円だが、改定前の500万円が返ってきた)
  • 公式サイトから公募要領PDFを落として、そのファイルを読ませる
  • 「PDFに書かれていることだけを根拠に」「書かれていないことは記載なしと」の2行を必ず入れる
  • 対象外になる条件と、受給後の義務を先に聞く
  • 最終判断は事務局・専門家へ。AIは「相談の準備を10分で整える道具」として使う

出典(2026年8月28日時点・公式サイトで確認)

制度は改定されます。実際に申請される際は、必ずご自身でリンク先の最新情報をご確認ください。

お、上記のうちデジタル化・AI導入補助金と省力化投資補助金の申請にはGビズID(省力化投資補助金はGビズIDプライム)が必要です。取得に日数がかかるため、締切から逆算して早めに手続きしてください。


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