会計ソフトから出したPDFなら、AIはきれいに読みます。問題は、取引先や現場から届くスキャンやFAXの帳票です。
「AIに読ませて転記をやめたい。でも数字を間違えられたら誰が責任を取るのか」。経理・労務のご担当者から必ず出る不安で、これは正しい不安です。実際、私が伴走している北関東の税理士・社労士法人様の給与処理では、AIの読み取り結果と帳票の合計が大きくズレました。しかもAIの出力はエラーに見えません。桁もカンマも正しいので、目視では気づけないのです。
そこで、どこから壊れるのかを実験で確かめました。架空の社員32名×手当5列の帳票を作り、スキャン品質を4段階に劣化させて、AIへの渡し方2通り×各3回で読み取り精度を測っています。結果を先に書きます。
壊れるのは「FAX級」だけ。それ以外は全問正解
- テキスト層のあるPDF(会計ソフト等が出力したもの)… 全問正解。AIは中の文字データを直接読める
- 150dpi・100dpi相当のスキャン … 渡し方によらず全問正解。きれいなスキャンは、実はそのままでも読める
- FAX・再スキャン級(75dpi相当) … PDFのまま渡すと3回中3回とも誤読
つまり「AIは帳票が苦手」ではなく、苦手なのは劣化した画像だけです。ここを分けずに「AIは危ない」と判断すると、使えるはずの帳票まで手入力のままになります。
誤読は2種類あって、怖いのは2つ目
1つ目は金額の桁化け。 休日出勤手当の45,000円が48,000円になりました。「5」が「8」に化けています。差額は3,000円。この規模のズレは、目視のチェックではまず見つかりません。
2つ目は氏名の誤読で、こちらのほうが危険です。 社員番号が空欄だった行の氏名が、実在しない別の名前に化けました。番号で照合できない行の名前が変わると、その人の手当が宙に浮くか、最悪、別人に付きます。金額が全部合っていても事故になります。
回避策は2つ。どちらも難しくありません
① PDFのまま渡さず、いったん画像にしてから渡す。
同じFAX級の帳票でも、長辺1600ピクセルほどの画像に変換してから読ませると、実測では誤読ゼロでした。ただし解像度は高ければよいというものではなく、下げていくとある地点で行がまるごと消えます。「精度が出ない」と感じたら、まず解像度を疑ってください。
② 帳票に印字された合計と、AIが読んだ明細の縦計を機械的に突き合わせる。
1件ずつ目視すると、結局これまでと同じ時間がかかります。合計だけを突合すれば、一致していれば中身は基本的に合っている、ズレていればその差額が手がかりになる。実際、合計を見ていたおかげで「社員番号が空欄の1名分が、どこにも紐づかずに消えていた」ことに気づけました。1件ずつ見ていたら気づけなかったと思います。
AIは間違えるときも堂々と間違えます。 だから、疑う仕組みのほうをシステム側に持たせる。これが実案件で行き着いた結論です。
手を動かしたい方へ
実測データの全部(4段階×2通り×3回の結果表、誤読箇所の拡大画像)と、コピペで動くGoogle Apps Scriptのツール一式(PDFの自動画像化+合計との自動検算つき・画面つき手順書PDF同梱)は、noteで公開しています。
▼ スキャン帳票の手入力、AIに任せたいけど「数字を間違えないか」が怖い経理の方へ【実測で答えます】
https://note.com/umeo0221/n/n8302cb3c648a
実測データの部分は無料で最後まで読めます。ツールが要らない方は、この記事と無料部分だけで判断していただいて大丈夫です。
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