2026.10.25

AIでMVはどこまで作れる?アイドル9人の2本で見る出来と限界

AI活用動画自社の実践

AIでMVはどこまで作れる?アイドル9人の2本で見る出来と限界

「AIで動画って、実際どこまで作れるんですか?」

AIの導入のご相談でお客様の会社にうかがうと、本題の業務の話が一段落したあとに、こんな質問をいただくことがあります。SNSで流れてくるAI動画を見て、「うちの会社の紹介動画や商品のPRにも使えるのでは」と気になっている方が多いようです。

当社UMEO CREATEでは、お客様の仕事とは別に、自社の取り組みとして「AIドル未来会議」というYouTubeチャンネルを運営しています。登場するのは、AIで生まれた9人のアイドル(AIドル)です。そして、この9人が歌って踊るミュージックビデオ(MV)も、絵・動き・曲のすべてをAIで作っています。

この記事では、その中から2本のMVを実際にお見せしながら、次の3つをお伝えします。

  • AIでMVはどこまで作れたのか(出来たこと)
  • AIだけでは出来なかったこと、人が見て直したこと
  • 道具がある状態と無い状態で、何が違うのか

先に結論を書いておきます。道具がそろっている今は、夜に「朝までに作っておいて」と頼んでおけば、朝には形になったものが出来上がっています。 一方で、同じことを道具なしでやろうとすると、正直かなり厳しいと感じています。その差がどこから来るのかも、あわせてお話しします。

この記事の目次(6項目)

最初のMV:ちびキャラが歌う54秒(2026年9月29日)

まずは、いちばん最初に作ったMVです。

最初のMV(2026年9月29日・54秒)。キャラの絵・動き・曲はAIで生成

このころの9人は、頭が大きく体が小さい、いわゆる「ちびキャラ」のデザインでした。もともとはYouTubeの解説番組に出てもらうために作ったキャラクターで、立ち絵(正面を向いて立っている絵)が中心です。

その立ち絵に曲をつけ、メンバーが1人ずつ名乗っていくMVにしました。

このMVで出来たこと

  • 9人それぞれの顔・髪の色・身長の差が、最後まで崩れずに保たれた
  • 止まった絵の一部を、手を振る・ジャンプするといった「動く絵」にできた
  • 歌入りの曲を、AIで用意できた

正直に言うと、作る前は「キャラの顔が途中で別人になるのでは」と心配していました。ところが、ちびキャラのように特徴がはっきりした絵だと、動かしても顔や身長差はほとんど崩れませんでした。これは、やってみて意外だった点です。

このMVで出来なかったこと

一方で、AIが勝手にやってしまったこともありました。

  • 元の絵に無い羽飾りが生えた。 メンバーの1人(るな)を動かしたところ、元の絵には無い白い羽飾りが、途中のコマに出てきました
  • 細かい特徴が途中で消えた。 別のメンバー(しの)を動かしたところ、元の絵にあった細かい特徴が、動いている途中でふっと消えました
  • 9人の集合絵が安定しない。 9人全員が並ぶ絵を作ろうとすると、同じ人が2人いる、1人足りない、といった絵がたくさん出てきました

AIは「それらしいもの」を作るのは得意ですが、「決めた通りの人数・決めた通りの持ち物」を守るのは苦手です。ここは人が1枚ずつ見て、使える絵を選び、使えない場面は差し替えました。

いまのMV:等身のアイドルが歌う「九人の歌」(2026年10月12日)

続いて、いまの版です。

いまのMV「九人の歌」(2026年10月12日・2分4秒)。絵・動き・曲はAIで生成

最初の版との違いは、見ていただくと一目で分かると思います。

デザインを「等身」に切り替えた

2026年10月4日に、キャラクターのデザインを、ちびキャラから「等身」(実際の人に近い頭と体のバランス)に切り替えることにしました。目指したのは、テレビアニメのオープニングのように、カットが細かく切り替わり、映像の中で物語が進んでいくMVです。

等身にすると、表情や仕草で伝えられることが一気に増えます。そのぶん、AIにとっても難しくなります。顔の細かい違い、衣装の飾り、髪の結び目の左右など、守らなければいけない約束ごとが増えるからです。

このMVには、9人がアイドルグループとして集まるまでのお話(結成ストーリー)の一場面も入っています。お話の中身は、ぜひ映像のほうでご覧ください。

このMVで出来たこと

  • 等身の9人が、それぞれ別の表情・仕草で歌う場面を作れた
  • 舞台の幕が開く、衣装が変わる、といった「見せ場」をMVの中に入れられた
  • 2分を超える1曲を、最初から最後までAIで作った絵と動きでつなげられた
  • カメラが寄ったり引いたりする、アニメらしい動きを入れられた

最初のMVから2週間ほどで、ここまで変わりました。作っている本人としても、「AIでここまで出来るのか」と驚いた部分です。

このMVで出来なかったこと・人が直したこと

等身になって、AIの苦手な部分もはっきり見えてきました。

  • 楽屋の場面で、メンバーの1人が別人の顔になっていた
  • 髪のリボンが、決めたのと反対側に付いてしまう
  • 9人の手振りがバラバラで、まとまりがない。 1人ずつ見ると自然なのに、並べるとそろっていない
  • 動きが歌より速く見えた。 映像の速さを少し上げたら、「歌より動きが速い」と感じる仕上がりになり、元の速さに戻しました
  • 後ろ姿が多すぎた。 9人の後ろ姿が続くと、誰が誰だか分からなくなります

どれも、AIが作ったものを人が見て「ここはおかしい」と気づき、直したり作り直したりした所です。特に「手振りがそろっていない」「ここは全員で歌い出したほうがいい」といった、見せ方の良し悪しは、AIに任せきりにはできませんでした。

曲もAIで作れる時代

曲については、「Sunoなどの音楽生成AIで作れます」とだけお伝えしておきます。歌詞の入った曲も、いまは音楽生成AIで作れる時代です。

2本のMVの絵と動きも、ふだん使っているAIのサービスの範囲の中で作りました。追加でお金を払って外部に何かを頼んだ、ということはありません。

道具がそろうと「朝までに作っておいて」で出来る理由

冒頭で、「道具がそろっている今は、夜に頼んでおけば朝には出来上がっている」と書きました。これは誇張ではなく、作っている本人の実感です。

MVを1本作るには、大きく分けて次のような作業があります。

  • 場面ごとの絵を用意する
  • 絵を動かす
  • 曲を用意する
  • 曲に合わせて、絵と動きをつないで1本の映像にする

道具がそろっていると、この「絵・動き・曲・つなぎ」の多くを、AIに任せられます。人がやるのは、「こういうMVにしたい」と伝えることと、出来上がったものを見て「ここは違う」と直しを入れることです。

逆に、道具が無い状態で同じことをやろうとすると、絵を描く、1コマずつ動かす、曲を作る、映像をつなぐ、のすべてを人が手でやることになります。絵の上手な人、アニメーションが作れる人、作曲できる人、映像編集ができる人がそろって、ようやく形になる仕事です。小さな会社が自社の取り組みとしてやるには、正直かなり厳しいと思います。

ここで大事なのは、「道具がそろえば、何でも勝手に出来る」わけではないということです。上に書いたとおり、羽飾りが生えたり、リボンの側が逆になったり、手振りがそろわなかったりと、AIは今もたくさん間違えます。それを見つけて直すのは人の仕事で、そこには時間もかかります。

それでも、「全部を人が手でやる」のと、「AIが作ったものを人が見て直す」のとでは、かかる手間がまったく違います。この差が、道具がある状態と無い状態の差だと感じています。

会社の仕事にどうつながるのか

「アイドルのMVの話は分かったけど、うちの会社には関係ないのでは」と思われた方もいるかもしれません。

ただ、ここでお話しした「AIが作ったものを人が見て直す」という形は、MVに限りません。当社がふだんお客様の会社で行っている業務の効率化も、根っこは同じです。

  • 書類の下書きをAIに作らせ、人が確認して仕上げる
  • 集計や転記をAIに任せ、人は数字の確認と判断に時間を使う
  • 夜のあいだに作業を進めておいてもらい、朝に結果を見る

道具を選び、任せる範囲を決め、人が見る場所を決める。MVづくりで分かったことは、そのまま会社の仕事にも当てはまります。

当社が自社の業務でAIをどう使っているかは、「[UMEO CREATEの実践](/our-practice.html)」のページにもまとめています。AIドルたちの解説番組は、YouTubeの「AIドル未来会議」(https://www.youtube.com/@idol_future_meet )でご覧いただけます。

まとめ

  • AIで、アイドルのMVは「絵・動き・曲」まで作れる。ちびキャラの54秒から、等身の2分4秒まで来た
  • 一方で、羽飾りが生える、人数がそろわない、リボンの側が逆になる、手振りがそろわない、といった間違いはまだ多い。見つけて直すのは人の仕事
  • 曲はSunoなどの音楽生成AIで作れる。絵と動きも、ふだん使っているAIのサービスの範囲で作れた
  • 道具がそろっていれば「朝までに作っておいて」で形になる。道具が無いと、全部を人が手でやることになり、かなり厳しい

AIで「どこまで出来るか」は、実際に作ってみるといちばんよく分かります。これからも、AIドルたちの取り組みを通して、出来たことと出来なかったことを正直にお伝えしていきます。


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